二年目の春・8

「みんな、出来たえ~。」

「美味しそう!」

「お腹空いたよ!」

この日のおやつはわんこひつまぶしだった。

すでに時間は夕方に差し掛かり、小腹が空いた少女達に雪広グループの人に教える為に作ったわんこひつまぶしを振る舞っていく。


「本当に食べられる器にしたんだ。」

「ダシと一緒に食べると器も美味しいよ。」

この日のメニューは中華風と牛豚鶏の三種類の計で、本番ではこの他にも海鮮も用意した計五種類を基本にすることになっている。

薬味もちゃんと種類を用意しているし、ダシも市販の顆粒ダシを溶かした物だが作った。

本番でもダシは手間を省く為に顆粒ダシにする予定だ。


「ねえ、これさ。 本番だとトレイにこれ直接置くの?」

「いや、紙を一枚敷いた方がいいと思うな。」

「ならさ。紙にも可愛らしい絵が欲しいね。 それだけでかなり印象変わるよ。」

味は以前に試食した物をベースにしたので問題なく好評だが、わんこひつまぶしは見た目にメルヘンらしさはない。

それに対して少女達から、本番ではわんこひつまぶしを乗せるトレイに敷く紙のアイデアが出されていた。


「そう言うことなら私達の出番よ! タマちゃん絵を描くわよ!」

「わたしも? おてつだいは?」

「絵を描くのも仕事よ!」

なお半ば勝手に絵本の製作をしているハルナは、ちょうどこの日は作業の手伝いに来ている。

紙に描く絵が必要だということになると、まだひつまぶしを食べてるタマモを抱き抱えて、一緒に絵を描くからと仮設店舗の隅に置いてあるテーブルに座り絵を描き始めた。

タマモとしてはお絵描きは仕事じゃないという感覚があるようだったが、これも立派な仕事だと言われると張り切ってお絵描きをしていく。


「イキイキしてるわね。」

「ハルナは好きなことをしてますから。」

「そう言えば絵本は出来そうなの?」

「本番には間に合いそうですね。中身もちゃんと子供向けになってますし。」

今回の出し物で意外に張り切ってるのはハルナである。

夕映とのどかは子供に見せられる物になるのか心配していたが、ちゃんと見せられる物になっている。

ただし動物達が擬人化していたが。

一応タマモに見せたらしいが、タマモは可愛らしい絵に気に入ったのでそのまま製作されていた。

ハルナは本気で麻帆良祭で売りたいらしい。


「売れるの?」

「さあ。それは私にはなんとも。」

明日菜と夕映はハルナがタマモに変なことを教えないか不安そうに見つつ、彼女は何処に行くのだろうと他人事のように考えている。

まあタマモが楽しそうなので、今日のところは止めはしないが。

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