二年目の春・8

翌日の午後になると仮設店舗では、雪広グループの社員数名に対してひつまぶし弁当の調理指導をしていた。

当初は横島の店での指導を考えていたが、超鈴音の中華風ひつまぶしもあることもあり、ちょうどいいので仮設店舗の厨房を使ってみながら調理指導をするらしい。


「とまあ、こんな感じなんですが。」

基本的にはレシピは同じだが、温かいままその場で食べるわんこひつまぶしと、弁当にしていつ食べるか分からない物では味付けが微妙に変わるのは必要なことだった。

そういう意味では雪広グループの側も理解していてノウハウはあるが、横島としては初めから弁当用のレシピを伝えている。


「なるほど。これに関しては……」

麻帆良祭まであまり日数がないこともあって雪広グループの社員は真剣であり、味を何度も確認しながら気になる点を確認していく。

弁当の方は大量生産するので、そちらはそちらの苦労もあり一筋縄ではいかない可能性もある。

彼らはこのあとすぐに帰って、さっそく試作品を作るらしい。


「可愛いじゃん!」

「タマちゃんだとよく似合うわね。」

一方仮設店舗の内装と外装造りも、なんとか進んでいた。

椅子に被せる形にするメルヘンっぽい布のカバーもすでに何組も完成していたので、椅子とテーブルを合わせて配置してみたがなかなかの出来に少女達のテンションもあがる。

テーブルに関しては題材のシールを貼り、足元なども簡単にだが装飾するらしい。

テーブルと椅子に関しては話し合いの末にタマモが考案した切り株の他に、ひまわりなどの花のテーブルと椅子を作っているが、やはりメルヘンという見た目からかタマモが座るとよく似合う。

正直メルヘンで大丈夫かと不安な少女も居たようだが、こうして形として完成するとなかなかの物だった。

まあタマモが座ると、幼稚園のお遊戯会でも見てる感じになるということもあるが。


「でもさ、ここまで来たらコスプレも必要じゃない?」

「コスプレって何するのよ。 変なのはダメよ。」

「私達も動物のコスプレとかしたら良さそうじゃん。」

ただここで一部の少女から去年のように自分達もコスプレするべきだとの意見が出ると、少女達は作業そっちのけで騒がしくなる。

ノリのいい少女はともかくとして、誰もがコスプレを好きな訳もない。

横島の身近な少女でもあまり目立つのが好きじゃない、のどかと夕映は微妙な表情をしていた。

まあすでに大学部では有名人の二人がコスプレをすれば、意外に大学生が呼べるのかもしれないが。


「みんなで着ぐるみでも着たら面白そう!」

「馬鹿ね。 着ぐるみなんか着たら調理とか大変なだけよ。」

ちなみに一部の少女からは着ぐるみがいいとの意見も出るが、完全に調理に不向きなのであっさり脚下されていた。

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