二年目の春・8

「みんな頑張ってるわね。 差し入れよ」

「あっ、木乃香のお母さん!?」

「噂の外人も居るじゃん」

穂乃香とアナスタシアが仮設店舗に到着すると、そこは賑やかに作業をしてる真っ最中だった。

少女達は二人と面識はあるが、特にアナスタシアは顔を見たことがある程度しか知らぬ者も結構居る。

木乃香達など彼女の正体を知る者は親しいが、反面で正体を知らぬ者は横島の店によく居る外人の元カノという印象が強い。

少女達に限らずアナスタシアがどうやって生活してるのかというのは、余計なお世話だが気にしてる者はそれなりに居た。

あまりお金に不自由してるようにも見えないので、資産家の娘か横島が援助してるのではと噂になっている。

なんと言うか意外な組み合わせだなと、よく知らぬ少女達は思うが、木乃香達は店が閉まって暇なんだろうなと少し苦笑いを浮かべていた。


「縫い物かぁ。私も何年もやってないわね。」

「そのくらい簡単だろう」

この段階で苦戦していたのは、どちらかと言えば裁縫組であった。

メルヘンな椅子のカバーやカーテンも作ろうとなったが、裁縫なんて学校の授業以外でやったことがない少女が大半なのだ。

あまり捗らないので今日はミシンを学校から借りてきてる。

ただ、穂乃香も正直裁縫はあまり得意ではない。

出来ないという程でもないがやる機会はほぼないし、京都の近衛本家では屋敷に手伝いに来てる年配者なんかが気を利かせてしてくれるので、自身が針を持った経験など近年は無かった。


「スゲー。 外人さん上手い」

「針とか持ったこと無さそうなのに……」

一方意外な注目を集めたのは、タマモがお手伝いしようとして失敗したのを見せに来たので、直してやっていたアナスタシアだった。

年の功と言えば怒られるだろうが、元々人形使いである彼女は人形作りは元より、人形に着せる服から自身の服までも以前は普通に自作していた程である。


「アナスタシアさんだしね。」

「料理は得意じゃないみたいだけど。 出来ても不思議じゃないのよね。」

あれよあれよとタマモが失敗したのを直していくアナスタシアに少女達の視線が集まるが、正体を知る少女達からすると意外だけど出来ても驚きはないらしい。

流石に年の話は口にしないが。


「わたしもがんばる!」

「違う。こうするんだ」

そんなアナスタシアにタマモは自分もやりたいとやる気になるが、そもそも年齢的にもタマモが裁縫をするのはまだ早い。

結局見てられなくなったアナスタシアが手伝ってやりながら一緒にやることになり、なんと言うか親子に見えてしまったが、それを指摘した少女は流石に居なかった。


「ねえねえ、マスター。なんで別れたの?」

「だから友達だっつうの。」

その後アナスタシアの意外な特技を見たからか、裕奈や美空に鳴滝姉妹が横島とアナスタシアの関係を根掘り葉掘り聞き始めてしまう。

横島は相変わらず否定するが、それで納得しない彼女達は妄想に妄想を膨らませて作業の手が止まりあやかに注意されるということを繰り返すことになる。

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