麻帆良祭への道

「イタッ! 痛いって!?」

横島や周りが笑ったことで横島がからかったことに気付いた夕映は、顔を真っ赤にして両手で横島をポカポカと叩いていた

横島が痛そうな表情でペコペコと謝り出すと夕映はようやく落ち着きを取り戻すが、やはり恥ずかしいらしく俯いてしまう


(私としたことが…… 猛省せねば)

この時夕映は、横島がからかってた事に気付かなかった事が恥ずかしかったらしい

横島が悪ノリするのは今に始まったことではないし、冷静だったら気付けたはずなのに動揺してしまったことが恥ずかしいようである


「悪かったよ。 謝るからさ。 そうだ麻帆良祭でなんか好きな物ご馳走しよう。 機嫌なおしてくれ」

思った以上に恥ずかしそうに俯く夕映に横島はなんとか機嫌をとろうとあれこれ声をかけるが、夕映としてはなかなかいじられた経験がないだけに反応に困っていただけだった

横島がたまに子供みたいなことをするのは今更な訳だし……


「そういえば、マスター麻帆良祭の予定は?」

周りと一緒にしばらく笑っていた美砂だったが、横島が夕映を麻帆良祭に誘ったことでふと話をそっちに持っていく

実はちょっと前から気になっていたが聞けなかったようだ


「予定? この店以外は木乃香ちゃんと桜子ちゃんと今約束した夕映ちゃんと見て回るくらいかな」

美砂が話を変えたことをちょうどいいタイミングだと感じた横島はそのまま自身の予定を話すが、その予定に先程まで笑い声が響いていた厨房が沈黙に包まれてしまう


「桜子……、あんたいつの間に?」

「木乃香やるわね」

夕映は今横島が誘った為に驚きはないが、桜子と木乃香の名前にはそれぞれ親しい者が驚きの表情を見せていた


「猫のイベント見に行こうって約束しただけだよ」

「うちはパレードや」

友人達の視線に特別意識してなかった二人はキョトンとしているが、周りの表情は僅かに微妙である


「あんたって本当にちゃっかりしてるわよね」

「木乃香は分からなくないけど、あんたいつの間に……」

微妙な空気の中、いつも一緒の桜子がサラッと横島と約束してた事実に美砂と円は半ば呆れたようにいつ約束したのか尋ねる

しかし桜子は普通に日常にするメールで誘っただけだった


ビッケの件からよくメールをしていた横島と桜子は地味に仲良くなっている

店に来る回数こそ木乃香達には負けるが、メールは一番桜子が一番していたのだ

美砂達三人の中で一番ちゃっかりしてるのは桜子だった


「モテるんですね~ よかったら天文部のイベントにもいらして下さいね」

「私も新体操のエキシビションやるよ。 よかったら見に来てね」

美砂と円や明日菜達が驚き桜子や木乃香と話す中、横島は千鶴とまき絵からイベントの招待券を貰う

二人の場合は特別横島を意識してる訳ではないのだろうが、それが逆によかったのかもしれない

元々さほど横島と親しい訳ではなかったが、ここ最近の料理の練習で結構親しくなっているのだ

特にモテる千鶴は気軽に誘える男性が居ないだけに、恋愛云々に関係なく楽しめる横島が割と嫌いではなかった

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