二年目の春・8

お昼からはこの日も仮設店舗の準備だった。

タマモは自分が考えていた大工さんと違うと感じているようだが、やはりみんなと一緒に作業するのは楽しくて仕方ないらしい。


「やっぱ入り口とか内装は、もっと耐久性のあるやつじゃないとあかんか。」

横島は昨日に引き続き発泡スチロールの加工をしていたが、タマモが加工した発泡スチロールをペタペタと触る姿を見てこのままではダメだと考えていた。

タマモに限らず子供は特に珍しい物は触りたがるし、大人も触る人が居るだろう。

発泡スチロールは加工が簡単で材料がタダなのが利点だが、触ったりして劣化すれば見た目が良くないのは明らかだった。


「素材を変えるか塗料を変えるカ。 塗料を変える方がいいかもしれないネ。 スプレー式のゴムコーティングなら簡単ヨ。」

「じゃあ、それにするか。」

素材を発泡スチロールから変えるか塗料なんかを変えて強化するかだが、超鈴音の提案で吹き付け式ののゴムコーティングに変更することにする。

ちなみに他の少女達と高畑は、良く分からないのでお任せらしい。

素材をもう少し強度のある建材にしてもいいが、作る手間やコストを考えると塗料を変える方がいいと判断したようだ。

機材や塗料は超鈴音が借りれるらしいのでお任せにして、横島はひたすら発泡スチロールの加工をしていく。




「うむ。 大丈夫なようだな。」

「それじゃ今夜にでもやるかの。 あまり間近にやると人払いが大変じゃからの。」

一方横島の店が午前で閉まった為に暇だったアナスタシアは、近衛邸を訪れて穂乃香が世界樹に対して告白の強制成就を変更する儀式魔法の確認をしていた。

呪文のスペルや魔力の使い方など、当然ながら簡単ではない。

一応魔法は横島とアナスタシアの共同開発だが、この世界の魔法に詳しくない横島は魔法の大まかな術式をアナスタシアに呈示して細かい術式はほとんど丸投げにしている。

穂乃香自体は魔法の才もあるしそれなりに修行を積んだが、才を生かすほどに魔法を使いこなせるかと言われると微妙なところだった。

いわば最終テストとしての確認であり、アナスタシアの許可が降りたことで近右衛門はいよいよ今夜にでも告白の強制成就を変更する儀式魔法を執り行うことにする。


「じゃあ、私は木乃香のところに様子を見に行こうかしら? アナスタシアさんも一緒にどう?」

「そうだな。 行くか。」

穂乃香は今回の麻帆良来訪の目的である魔法の目処が立つと、ホッとした様子で木乃香達の仮設店舗に行くことにする。

その際に暇そうなアナスタシアを誘うと、彼女も一応自分のクラスの出し物故に興味があるのか行くことにしたらしい。

少し奇妙な組み合わせだが穂乃香はエヴァの過去や素性をほとんど気にしてなく、そういうところは娘の木乃香と同じであった。

16/100ページ
スキ