二年目の春・8
「代表。 大変です!」
「今度はなんだい? クルト坊やが逃げたかい?」
「とにかくこれを見てください。」
土偶羅が流した詠春の偽インタビュー映像が、悠久の風のエレーヌ・ルボーンに報告されたのは僅か五時間後だった。
最初は数人が見て拡散した映像は数時間後にはあちこちに転載されていて、地球と魔法世界のマホネット視聴者によりあっという間に広まっている。
「やれやれ。よほど嫌われてるんだね。クルト坊やは。」
「恐らくゲーデル議員が、元老院に当選した頃の物でしょう。 当時メディアが詠春氏のコメントを欲しがりましたから。」
クルトと悠久の風とメガロメセンブリア当局が神経戦をする最中で、それをぶち壊しにするような映像が流れたことにエレーヌは心底疲れた表情をした。
「でも変だね。 詠春はこんな取材を受けるタイプじゃない。」
「では偽の映像だと?」
「話してる内容は間違ってないさ。 詠春らしいとも言える。 だけど……」
もう引き返せないほど追い詰められてるクルトに、この映像は本当に止めを刺しかねないことにエレーヌは頭を抱えるが、同時に微かな疑問というか違和感を感じる。
本当に詠春がこんな取材を受けたのか疑問があることと、何故このタイミングに流れたかだ。
「まさか……」
「代表?」
「この映像使って、引き抜きを加速させな。 下手すると当局が動くよ!」
「はっ、はい!」
最早なりふり構っていられないと判断したエレーヌは、出所不明の映像すら利用してクーデターに関与した者の引き抜きを指示する。
部下が目の前から居なくなるとエレーヌは一人で、映像の影響と流出させた者の意図を考えていく。
目的はクルトに止めを刺すことかと最初は思ったが、同時に思うのだ。
詠春は今のクルトをどう見てどう考えているのかと。
「まさか、近衛のじいさんか?」
もし映像が本物ならば、それは詠春に近い者が流した可能性が十分にある。
映像が本当に数年前の物ならば、御蔵入りにする理由などないのだから。
詠春が考える策ではないが、近右衛門ならばやりかねないとエレーヌは思う。
クルトと共に詠春と神鳴流の名誉が、地に堕ちるのを近右衛門が望むとは思えないという動機もある。
「アタシならこれも利用するのを読んだだろうしね。 詠春の名誉までアタシに守れって言いたいのかい?」
もちろん他の可能性も十分にある。
詠春のインタビューを赤き翼の力を嫌う誰かが、握りつぶした可能性だって無いわけではないのだ。
しかしもし近右衛門だとしたら、詠春の名誉を守るために更なる手を打つ可能性があった。
「貸し借りはお互い様か。 いいだろう。 詠春の名誉もついでにまもってやろうじゃないか。」
こそこそと動く近右衛門が少し気に入らないエレーヌだが、近右衛門の気持ちも分からなくもない。
悪戯に混乱を助長させたくないとの考えもあり、詠春と神鳴流はクルトと無関係だとの工作をついでにやることを決める。
自体は一気に加速していく。
「今度はなんだい? クルト坊やが逃げたかい?」
「とにかくこれを見てください。」
土偶羅が流した詠春の偽インタビュー映像が、悠久の風のエレーヌ・ルボーンに報告されたのは僅か五時間後だった。
最初は数人が見て拡散した映像は数時間後にはあちこちに転載されていて、地球と魔法世界のマホネット視聴者によりあっという間に広まっている。
「やれやれ。よほど嫌われてるんだね。クルト坊やは。」
「恐らくゲーデル議員が、元老院に当選した頃の物でしょう。 当時メディアが詠春氏のコメントを欲しがりましたから。」
クルトと悠久の風とメガロメセンブリア当局が神経戦をする最中で、それをぶち壊しにするような映像が流れたことにエレーヌは心底疲れた表情をした。
「でも変だね。 詠春はこんな取材を受けるタイプじゃない。」
「では偽の映像だと?」
「話してる内容は間違ってないさ。 詠春らしいとも言える。 だけど……」
もう引き返せないほど追い詰められてるクルトに、この映像は本当に止めを刺しかねないことにエレーヌは頭を抱えるが、同時に微かな疑問というか違和感を感じる。
本当に詠春がこんな取材を受けたのか疑問があることと、何故このタイミングに流れたかだ。
「まさか……」
「代表?」
「この映像使って、引き抜きを加速させな。 下手すると当局が動くよ!」
「はっ、はい!」
最早なりふり構っていられないと判断したエレーヌは、出所不明の映像すら利用してクーデターに関与した者の引き抜きを指示する。
部下が目の前から居なくなるとエレーヌは一人で、映像の影響と流出させた者の意図を考えていく。
目的はクルトに止めを刺すことかと最初は思ったが、同時に思うのだ。
詠春は今のクルトをどう見てどう考えているのかと。
「まさか、近衛のじいさんか?」
もし映像が本物ならば、それは詠春に近い者が流した可能性が十分にある。
映像が本当に数年前の物ならば、御蔵入りにする理由などないのだから。
詠春が考える策ではないが、近右衛門ならばやりかねないとエレーヌは思う。
クルトと共に詠春と神鳴流の名誉が、地に堕ちるのを近右衛門が望むとは思えないという動機もある。
「アタシならこれも利用するのを読んだだろうしね。 詠春の名誉までアタシに守れって言いたいのかい?」
もちろん他の可能性も十分にある。
詠春のインタビューを赤き翼の力を嫌う誰かが、握りつぶした可能性だって無いわけではないのだ。
しかしもし近右衛門だとしたら、詠春の名誉を守るために更なる手を打つ可能性があった。
「貸し借りはお互い様か。 いいだろう。 詠春の名誉もついでにまもってやろうじゃないか。」
こそこそと動く近右衛門が少し気に入らないエレーヌだが、近右衛門の気持ちも分からなくもない。
悪戯に混乱を助長させたくないとの考えもあり、詠春と神鳴流はクルトと無関係だとの工作をついでにやることを決める。
自体は一気に加速していく。