二年目の春・7

「おじさん! こっちネギま追加ね!」

「あいよ」

高音のことで少し珍しい経験をした少女達だが、横島と少女達はまっすぐ帰らずに途中にあった焼き鳥屋に入っていた。

年齢層が高めの男性がほとんどの昔ながらの焼き鳥屋で、建物には煙りと焼き鳥の匂いが染み付いているような店だ。

この手の店は外に匂いがしてくるので、ちょっとつまむ程度にしようかと入ると座敷に詰めて座り焼き鳥を頬張る。

炭火で焼いた香ばしさに肉の脂と旨味があれば、塩だけのシンプルな味付けで十分美味い。

この店では基本的に酒のつまみなので少し濃いめの味付けだが、ウーロン茶なんかでも美味しく食べられる。


「ここで食べ過ぎると、夕食でカロリーカットした意味がなくなりますよ。」

横島なんかは気にせずビールを飲んでいて桜子なんかはバクバクと焼き鳥を頬張るが、のどかが現実を思い出させる一言を告げると少女達の食べるスピードが鈍る。

正直育ち盛りの成長を抜きにして体重が増えたとかウエストにお肉が付いたとかはないのだが、これから夏場にかけては肌の露出が増えるので気になるものは気になるらしい。

ちなみに説明会にはアナスタシアは行かなかったので、ここに彼女の姿はなく大人は横島と刀子だけになる。

刀子の場合は少女達よりもっと気にしていて、現在老化は止めてるが年齢的に太らない訳ではないし成長もしないので慎重な様子で軽くビールを飲む程度だ。


「おいしいね!」

「うん! 美味しい!」

なおのどかの一言を気にもしてない桜子は、タマモと一緒に遠慮なく食べていた。

横島と親しくなってから特に桜子はよく食べるが、彼女は無駄なお肉にならない体質の強みがあるからだろう。

あとまき絵も何気に食べたら運動をすればいいからと遠慮なく食べてるが。

余談になるがまき絵と亜子は春の魔法協会の説明会のあとに魔法を知ったので、今回魔法協会に初めて関わっている。

おかげで一部の男子学生からは、また横島の周りに女のが増えたと嫉妬の籠った目で見られていた。

他にも魔法使いとして有名になればハーレムが作れるのかと、半ば妙な勘違いをした男子が、俺もハーレムを作ると宣言して周りから冷たい目で見られていたが。

不思議と横島は女にだらしないからと女子から避けられはしても、非難まではされてなくハーレム願望の男子は何故だと騒いでいた。

後日横島の元には、ハーレムを作る方法を教えてくれと正直に頼みに来る馬鹿が現れるのだが。


「大丈夫だって。 太ったらマスターに責任取ってもらえばいいんだよ!」

ちなみに桜子に関しては、万が一太ったら横島に頼る気満々だった。

他人に丸投げばかりしてる横島を、桜子はちゃっかり見習っていて困ったら頼る気らしい。


「おいおい……」

横島はそんな桜子に困った様子だったが、意外に桜子ほどはっきりと頼られると本人が満更でもないのは少女達は理解している。

とはいえ桜子ほど開き直れないのも確かで、他の少女達は少し桜子を羨ましげに眺めていた。


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