二年目の春・7

会議室には様々な年代が集まっていたが、多いのはやはり若い学生達だった。

仕事の都合などもあるのだろうし、まだ若い学生の方が説明会への参加率が高いようだ。


「こんだけ居ると意思疏通も大変だろうな。」

「毎年何かしらのトラブルはあるようですから。」

魔法協会自体が任意による互助団体なため、基本的に協会員や協力者に何かを強制するというのは難しい。

説明会の内容も怪しい人を見掛けたら本部に連絡することや、魔法は迂闊に使わないといった基礎的なことがほとんどだった。


「あっ! 美空ちゃんじゃないの」

「ゲッ! アスナ!」

説明会は三十分ほどで終わるも、会議室を出るとシスター姿の美空と出会す。


「ちょっと! なんでそんな嫌そうなのよ!」

「いや、私は美空なんて名前じゃありません。」

「うわ、シスター服じゃん!」

「コスプレみたい!」

ただ横島達の姿を見るとあからさまに嫌そうな声と表情をする美空に、明日菜は少しムッとした表情をするも、他の少女達はシスター服を着た美空を物珍しげに見たりからかったりしていた。

正直美空としては何かと騒ぎを起こす横島達と、出来るだけ関わらないようにしていた一人になる。

横島のことは好きでも嫌いでもなく、ただ関わるとあれこれと仕事をさせられそうで嫌なのだ。

一言で言えば目立つのも、働くのも好きではないだけであるが。


「貴女達、何を通路で騒いでるのですか!」

「やば。 もっと面倒な人が来た。」

「面倒な?」

ただ魔法協会の施設の通路で騒ぐ少女達の元に、今度は高音・D・グッドマンと佐倉愛衣が現れると美空の表情は更に嫌そうになる。


「魔法使いたる者。 日頃の生活態度から正しく有らねばなりません。 特に貴女達はもう少ししっかりなさい。」

横島達とは別の方向で魔法協会では有名人な高音が現れた事に、美空は気配を消すように少女達に紛れる。

現在の関東魔法協会では珍しい魔法至上主義とでもいう価値観の高音は、いわゆる極端な主義志向の人間として有名だった。

魔法協会の仕事にも率先して参加するし基本的に善人なのだが、関東魔法協会のちょっと緩い互助会のような空気が好きではないらしく自分にも他人にも厳しい。

はっきり言えばメガロメセンブリア的な価値観の人間になる。

魔法協会にはそれぞれ事情があるからと現魔法協会中枢の近右衛門達の独立を維持する方針は理解するも、社会への奉仕精神が足りないとは思っているちょっと面倒な人間だった。


「葛葉先生が着いていながら何ですか。 魔法協会はお遊びではないのですよ。 全く……」

「美空ちゃんとえらい違いね。」

「まあ。 建前はね。」

自らは世のため人のために生きる事を目標に努力する高音だが、悲しいことに麻帆良ではあまり理解されてない。

明日菜は初めて見るタイプの高音にビックリしていたが、建前だと言い切る美空がどちらかと言えば麻帆良には多い。


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