二年目の春・7

それから数日が過ぎたこの日、夕食を終えた横島達は珍しくみんなで魔法協会の地下にある大会議室に向かっていた。

「何があるの?」

「麻帆良祭の説明会ですよ。毎年いろいろ騒動が起きるみたいで、一応説明会に出て欲しいようなので。」

目的は麻帆良祭における魔法協会としての説明会である。

人が多いとそれだけ望まぬ人も増えるこの時期、魔法協会が一年で一番忙しい時期となる。

日頃麻帆良に居ないOBや各地からの応援も駆け付けるし、今年は関西呪術協会からも応援が来ることになっていた。

ただ個人の力量から魔法協会との関わり方まで多岐に渡る魔法協会において指揮命令とまではいかなくても、人員の監理と情報の一元化はなかなか大変なものだった。

何より気を付けないと、同じ魔法協会の人員同士を侵入者や敵と誤って対立したなんて話は毎年存在する。


「私達なんかするの?」

「いえ、特には必要ないようです。 ただ何かに遭遇した場合の対処や、万が一の時には一般人の避難誘導くらいはして欲しいようですから。」

史実と違い世界樹の告白の強制成就に対処の目処が付いたことから、例年並みの体制でよくなり近右衛門達幹部はホッとしていた。

しかし最低限の連絡と連携の確認などの説明会には、なるべくみんな参加して欲しいと魔法協会では頼んでいる。


「ああ。 後方支援の雑務で良ければ、多少の謝礼は出るようですよ。 魔法協会の本部や施設での電話番とか書類整理とかお茶汲みとか。」

「そうなんだ? いつから?」

「すでに魔法協会では麻帆良祭体制で入ってるので、日によっては人を募集してると思うです。 私やのどかは忙しいので参加してませんが。」

いわゆる社会人でいうほう・れん・そうの三つくらいは覚えて欲しいのが魔法協会の本音で、若い見習い魔法使いなんかは怪しいというだけで勝手に判断して動く血の気の多い者も居るので魔法協会の苦労は絶えなかった。

基本的に忙しい木乃香達は準備期間から本番を通して暇ではないので魔法協会に関わる余裕はないが、美砂達は準備期間のうち数時間くらいならバイト感覚で小遣いを稼げないかとちょっと興味があるらしい。

実際中学生の非戦闘員は比較的楽な手伝いで、ちょっとした謝礼や麻帆良祭で使える無料券など貰えるので、参加してる者は結構いる。

中学生なんかだと参加することに意味があり、魔法協会の仕事を知ってもらうだけでもいいという判断があった。


「本番はハニワ兵も人に擬装して麻帆良に来るからな。 まあ問題はないだろ。」

「ハニワさんも来るん?」

「まあな。 警備の手伝いと観光にな。」

ただ少女達はそれよりも何よりも、ハニワ兵が人に擬装して麻帆良祭に来るという情報に騒然とする。

ハニワ兵の件は刀子と高畑は知ってるが少女達にはまだ知らされてなかったのだ。

優秀なんだけど、何処か自由でちょっと変わってるハニワ兵が大量に麻帆良祭に来て大丈夫なのか少し不安を感じる者も居るが。

今年の麻帆良祭も何が起きるか分からないと、少女達は改めて感じることになる。

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