二年目の春・7

「いただきまーす!」

さてこの日の夕食はチキン南蛮だった。

麻帆良祭や夏を前にちょっとヘルシーにしようと揚げない代わりに焼いて作ってみたアレンジ料理になる。


「どうだ?」

「美味しい!」

「ちょっとサッパリしてる?」

「ご飯がススム!」

揚げない分だけ少し油感が足りない気もするが、肉をサッパリ甘酢に絡ませていることやタルタルソースのコクがあるので十分美味しい出来上がりだった。

育ち盛りとはいえすでに夏服に衣替えも済んでいて、夏には薄着になるのでこの時期の少女達は少しカロリーに神経質になっている。

尤もこの場の少女達は異空間アジトで季節に関係なく海に行くので、地味に日頃から気を付けていて横島からすれば気にしすぎにしか思えないが。


「タマちゃん、口元が汚れてるえ。」

なおタマモなんかは口を大きく開けて頬張るため、口元にタルタルソースを付けていて、隣の木乃香に口を拭いて貰っていた。

まだ甘えたい年頃なんだろう。

周りが世話を焼いてくれるのが嬉しいらしく、タマモは口元を拭いて欲しいと言わんばかりの態度である。


「そういえばマスターも口元拭いて貰うの好きだったわね。」

「あの写真のことはそろそろ忘れて欲しいんだが。 せっかくの爽やかなイメージが台無しになるだろう。」

「爽やかなイメージねぇ。 マスターの爽やかってどんな意味なんだろ。」

ただ木乃香が口元を拭いてやる姿に、一部の少女が昨年の麻帆良祭で有名になった写真の話をすると横島はやはり恥ずかしそうにため息を溢した。

別に嫌ではないが横島のイメージする自分とは合わないというか、いい年をしてちょっと恥ずかしい写真であることには変わりない。


「でもさ。 歴代の受賞作とか展示してなかったっけ?」

「していた気もするですね。」

「ちょっと待て! アレ今年もかざるのか!?」

「確か場所が違ったはずですが、毎年受賞作は展示されますね。」

「あかん。 旅に出よう。 みんなで旅に出よう。」

木乃香のことが好きとか嫌いとか関係なく男として恥ずかしい写真が今年も展示されると聞いた横島は、がっくり落ち込んで旅に出ようと言い出すも誰も乗ってはくれなかった。

みんな麻帆良祭を楽しみにしてるし、横島もあれこれと予定が入っていて旅に出るなんて無理なのだが。

しかしまあ、そこで一人でと言わない事は横島の変化であり少女達もそこは満更でもないようで笑って聞き流している。


「だめ! まほらさいに、さんかするの!」

なお麻帆良祭を一番楽しみにしているタマモは、横島の逃亡を誰よりも許さずプンプンと怒って麻帆良祭の参加を訴えると少女達ばかりか横島も爆笑してしまうことになる。

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