麻帆良祭への道

次の日の午後、仮設店舗の外観にはすでに足場が組まれていた

前日の話し合いで外観も作ることが決まった為に、急遽あやかが足場を用意したらしい

店舗の周辺には内装や外観に使用する新しく木材や資材が積まれており、今日からいよいよ準備に取り掛かることになる


そんな中いち早く仮設店舗に来てで準備をしていたのは、超と葉加瀬の二人だった


「本当にいいんですか? これ使って……」

「構わないネ。 せっかくのイベントなのだから派手にやりたいヨ」

二人は一般人が見れば使い道が分からないような器材をいくつか持ち込み、試運転をしようとしている

それは若干オーバーテクノロジーの部類に入る物だったが、茶々丸よりは重要度も低く今回のイベントに使っても問題ないと超が判断した物であった


「二人とも早いな~」

超と葉加瀬が作業をしている中、次に現れたのはダンボールを二つほど抱えた横島である

横島は超達が持ち込んだ器材を見て一瞬驚きの表情を見せるが、特にツッコミもしないままダンボールを厨房に運んでいく


「それが立体映像投影機か。 しかし工学部の研究中の器材なんかよく持ち出せたな」

「開発は工学部も噛んでますが、実質的な開発者は超さんなんです。 特許も超さん個人で申請してますし」

超達が持ち込んだ器材は立体映像投影機だった

超鈴音が工学部や一部で開発中の代物だったのだが、今回の店舗の目玉にと前日に超自身が立体映像投影機を使うと明言していたのだ


(似たような発明が確かあったな。 あれは確かアメリカが開発したはず……)

超が発明した立体映像投影機だが、横島のかつての世界ではアメリカが開発した技術として神魔戦争時に存在していた

まあもちろんこの世界が全て横島の世界と同じ訳ではないし技術的な時差などは存在するが、中学生が発明出来る代物ではない


(謎の天才少女か…… はたして薬になるのか毒になるのか……)

立体映像投影機や茶々丸に関連する特許を幾つかすでに取得してる超鈴音は、世界的に有名な天才少女だった

あまりマスコミなどに出ないことから一般的には知られてないが、その世界では有名人である

横島は彼女にやはり嫌な予感を感じずにはいられなかった



「そいつでテレビとか映画とか見れば楽しいだろうな~」

「素直にアダルトビデオが見たいと言えばいいヨ」

「工学部の人達がよく言ってましたもんね」

心の中の嫌な予感とは裏腹に立体映像で映画が見たいと言う横島だったが、超と葉加瀬は男の本音を恥ずかしげもなく暴露してしまう

どうやら工学部では立体映像でAVを見ることを研究してる連中が居るらしい


「お前らな…… 一応本音と建前は必要だろうが。 中学生相手にAVを語る工学部の連中の神経を疑うわ」

「否定はしないのネ」

「男なんてそんなもんだよ」

横島は中学生相手にAVの話をしている工学部の男性陣に苦笑いを浮かべるが否定はしない


しかし超は知らなかった

実は横島自身が通常映像を立体映像に変換する技術をすでに実用化してるなど……

神魔戦争初期に土偶羅が集めていた人界の技術に立体映像の技術があり、横島が友人達と立体映像のAVを夢見て変換技術を開発したなど知るはずがない事実だった


それは横島がまだ世界の終焉など有り得ないと思っていた頃のことである

神魔戦争初期、横島はただの脇役でしかなかったのだから…………

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