二年目の春・7

「千鶴。 聞きにくいんだけど……、横島君とは何か進展はあったかい?」

同じ頃千鶴は父である衛の元を訪ねていたが、衛は最近の日常のことを聞いた後に言いにくそうに横島との関係に触れた。


「いえ。 特には。」

「そうか。 他の子や葛葉さんは?」

「みんなも同じだと思うわ。」

横島が麻帆良に来て一年が過ぎたし、魔法や秘密を明かして半年が過ぎようとしている。

衛は父親としてまだ中学生の娘がまだ女ではないことに安堵してしまうが、同時に不安にもなるというかなり複雑な立場だ。

父親として安堵しても、男としては他に女が居るのではと少し不安になる。

横島の実年齢や精神年齢はともかく、男として考えるとあれだけモテて誰にもなにもしてないのは少し奇妙にも見えてしまうのだ。

出来れば今しばらくは娘のままで居て欲しいが、他に盗られて泣くような姿も見たくない。

それと困ったことに、現状の麻帆良には横島は必要な存在だった。

正直なところ正式に婚約でもしてくれたらと思わなくもないが、そうすると今度はあの人数が問題になる。

微妙なバランスで上手く纏まってる現状を思うと、外からあれこれと言うのは好ましくない。

ただ自分達大人の存在が横島と娘達の関係のハードルになってるのではと思うと、それもまた困るのが本音だった。


「もし私達がこのままずっと一緒にと望めば?」

「……認めるしかないかな。 他の子の親御さんとか説得は大変そうだけどね。 ただ少し悪い言い方をすれば、怪我や病気の心配も無くなり老後の心配もなくなると思えば説得は可能だろうね。」

千鶴はそんな複雑そうな父に単刀直入に本題に斬り込んだ。

横島と少女達が一緒に居る為の最大の障害は両親なのは明らかだった。


「ただ千鶴やみんなで彼を繋ぎ止めておけるのかは、僕達には分からないけどね。」

「多分大丈夫よ。 それは。」

一方の千鶴は父がかなり真剣に覚悟をしてることに驚いていたが、実際すでに覚悟が必要なほど関係が深まりつつあることも事実になる。


「リアルハーレムだよね。 正直男としては少し羨ましいかな。 ああ母さんには内緒で。」

形としては進展はないが見えない進展は確実にしていて、父親からハーレムという言葉を聞くと千鶴はつい笑ってしまう。

あり得ないと千鶴自身は今でも思う。

相手が横島でないならば絶対に。

ある意味増えすぎた女性が共存する為に妥協したのが現状であり、ハーレムは女性陣の本意ではない。


「やはり、男性はそうなのね。」

「実際に出来るか出来ないかは別だよ。 一人の伴侶でも普通は養うのに苦労するし、一緒に生活するとなれば合わないこともある。 普通の男には無理だろうね。」

ただ横島が望むならば受け入れる覚悟は少なくとも千鶴にはある。

もちろんこれ以上は増やさないで欲しいのは当然だが。

結局横島と離れて普通に生きるかと言われると、それは嫌なのが女性陣の共通認識なのだ。

普通ならば出来ないことだが、横島ならば不可能ではないと。

正直捕まったのが自分達なのか横島なのか千鶴にも分からないが。

とはいえ現状は千鶴にとって幸せと言えるし、それで今は十分だった。


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