二年目の春・7

「茶々丸さん。 一緒に帰りましょう!」

「はい。」

一方茶道部の部活を終えたさよと茶々丸は、一緒に帰路に着いていた。

史実と違い茶道部に入ったさよだが、やはり茶道が合っているのか楽しんで部活を続けている。

対する茶々丸は元々はエヴァが入ったのだが、肝心のエヴァが呪いから解き放たれて学校に来なくなって以降も学校と茶道部は続けていた。


「麻帆良祭の野点楽しみですね」

「はい。 毎年多くの皆さんが来てくれて楽しいですよ。」

すでに魂がありガイノイドとしての枠からはみ出しつつある茶々丸と、一応神霊のさよはお互い茶道部という共通の部活も相まって仲がいい。

お互いに変な気を使わなくていいのも仲がいい原因だろうが。


「私ずっと見てたんですよ。 麻帆良祭を。 去年より前はあんまり覚えてないんですけどね。 まさかこうして参加出来るなんて……」

「さよさん。」

「前は触れたくても触れられなかったのに、不思議です。」

さよにとって今年の麻帆良祭は初めて参加する麻帆良祭なのだ。

今まで変わらぬ時の中で誰にも知られずに、見ているしか出来なかった麻帆良祭に自分も参加出来る。

その喜びを噛み締めてるようだった。


「世の中には不思議なことがいっぱいとは、さよさんの言葉でしたね。 本当に不思議です。 幽霊であるさよさんやガイノイドである私が普通に生きている現状が。」

「ふふふ。本当ですね。」

不思議という言葉はある意味、魔法の言葉かもしれないと茶々丸は思う。

超鈴音の科学では解明されない自分とさよの現状が一言で表現されてしまうのだから。


「不思議なものには必ず答えがある。 と超なら言うかもしれませんね。」

「答えですか?」

「私やさよさんの現状にも、きっと答えがあるんですよ。 ただ私は不思議なままでいいかと最近は思います。」

さよは茶々丸の言葉に少し理解できなかったのか、一瞬キョトンとするも不思議なままでいいと言うと何故か嬉しくなり微笑んだ。

茶々丸は理解している。

自分やさよは魔王よりも上の、創造主に限り無く近い力に守られていることに。

横島に聞けば不思議は不思議でなくなるのかもしれない。

恐らく超や葉加瀬が知ればそれを聞きたがるだろうが、茶々丸は不思議と聞こうとは思わなかった。

それは彼女の生みの親が超と葉加瀬ならば、育ての親がエヴァだからだろう。

最早AIは彼女の思考を助ける一因でしかなく、全てではないのだ。


「きっといい思い出になりますよ!」

「そうですね。」

共にこの先も悠久の時を生きる友として、さよと茶々丸は二度とない大切な時間を今生きている。

さよも茶々丸もそれで満足だった。

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