二年目の春・7
「悠久の風が出てきましたか。」
「どうする気だ? あいつらは絶対動くぞ。」
一方魔法世界ではクルト一派が悠久の風が密かに動いて居ると事実を早くも掴んでいた。
メガロメセンブリアのため魔法世界のため、秘密結社完全なる世界とのでは共闘した仲間とも言える関係である。
共に中枢は魔法世界の真相や二十年前の真相を知り魔法世界の救済を考えるものの、穏健派の悠久の風と過激派のクルト一派では考え方から手法まで水と油ほど違う。
ただ現時点ではすでにメガロメセンブリア内での影響力は比べるまでもないほど差があり、クルト一派は極少数の過激派でしかない。
歴史を見ても分かるが極端な主義思想の過激派は追い詰めれば追い詰めるほど過激になる傾向があり、端から見るとクルト一派はその典型的な一例だった。
「手強い相手が出てきましたね。 代表のエレーヌ・ルボーンは出来れば敵に回したくなかった相手の一人です。 まさか彼女がこれほど早く動くとは……。」
すでに悠久の風が動き出してクーデター賛同者に接触している事実をクルト一派の中枢は得ていたが、クルトとしては予想外
の早さで動いたことに驚きその訳を冷静に考えている。
悠久の風はメガロメセンブリア内の政争に首を突っ込むなどあり得ない団体であり、クーデターを計画してるとはいえ成功率の高くないクーデターにわざわざ出て来たのは意外だと感じていた。
「そんなこと言ってる場合か? 奴が嗅ぎ付けたということは当局にも知られてるんだぞ!」
「どのみちクーデターは囮です。 魔法を旧世界で公開し混乱した隙に二十年前の真相を明らかとしてメガロメセンブリアの現体制は潰します。 彼女達には新しい体制の一員になって欲しかったのですが。」
クルトはもう完全にメガロメセンブリアを潰す気でいた。
現体制とそれを築いた歴史全てを否定してメガロメセンブリアの歴史を終わらせることで、地球への移民を加速させる気なのだ。
新しい魔法使い達の象徴的な存在として、本当に世のため人のために働く悠久の風には地球側に移民をした魔法世界の人間達を纏めて欲しいとクルトは期待していた。
流石に自分達だけで全て纏めていけると思うほどクルトは愚かではなく、地球への移民を果たしたらある程度協力できる者達を増やすつもりでは居たらしい。
かなり一方的で都合がいい話だが、歴史の真相を明らかにすれば悠久の風には他に手がないのも事実で、放っておいても地球と魔法世界人達の融和を目指して動くと期待していたようだ。
「しかしタカミチは本当に動きませんね。」
「ゲーデル! もう魔法世界を捨てたタカミチの話をしてる場合か!」
「落ち着きなさい。 当局は私達が動くまで止めませんよ。 彼らが欲しいのは私の首と赤き翼を叩き折る機会なんですから。」
ただクルトは悠久の風すら動いた現状でも高畑の動きが丸でないことを訝しげに考えていた。
同じ環境で育ち同じ理想がある高畑は、必ず何処かで出てくるとクルトだけはまだ考えている。
しかしクルトの側近ですら高畑は魔法世界を捨てたと語るように、メガロメセンブリアの中枢なども高畑はもう動かないかもしれないと考えていた。
正直メガロメセンブリア中枢などは高畑はクルトにうんざりしたのではとすら見ていたが。
メガロメセンブリア中枢とて魔法世界の問題や将来を案ずる者は居るが、クルトに一番うんざりしてるのは彼らだった。
高畑にクルトを押さえるように頼めないかとメガロメセンブリア元老院の穏健派などは割と真剣に検討した程で、安易に動かずクルトと距離を置いた高畑の評価は皮肉なことに上がっている。
悠久の風のエレーヌ・ルボーンは高畑を守ることに神経を尖らせているが、元老院の中では高畑まで巻き込むことは否定的な者が意外に多い。
高畑と高畑の庇護者である近右衛門を巻き込めば地球側の反メガロ感情を悪化させるばかりか、ヘラス帝国に問題への介入の口実を与えかねないのでクルト一派とは切り離すべきだという考えが主流になりつつあった。
「どうする気だ? あいつらは絶対動くぞ。」
一方魔法世界ではクルト一派が悠久の風が密かに動いて居ると事実を早くも掴んでいた。
メガロメセンブリアのため魔法世界のため、秘密結社完全なる世界とのでは共闘した仲間とも言える関係である。
共に中枢は魔法世界の真相や二十年前の真相を知り魔法世界の救済を考えるものの、穏健派の悠久の風と過激派のクルト一派では考え方から手法まで水と油ほど違う。
ただ現時点ではすでにメガロメセンブリア内での影響力は比べるまでもないほど差があり、クルト一派は極少数の過激派でしかない。
歴史を見ても分かるが極端な主義思想の過激派は追い詰めれば追い詰めるほど過激になる傾向があり、端から見るとクルト一派はその典型的な一例だった。
「手強い相手が出てきましたね。 代表のエレーヌ・ルボーンは出来れば敵に回したくなかった相手の一人です。 まさか彼女がこれほど早く動くとは……。」
すでに悠久の風が動き出してクーデター賛同者に接触している事実をクルト一派の中枢は得ていたが、クルトとしては予想外
の早さで動いたことに驚きその訳を冷静に考えている。
悠久の風はメガロメセンブリア内の政争に首を突っ込むなどあり得ない団体であり、クーデターを計画してるとはいえ成功率の高くないクーデターにわざわざ出て来たのは意外だと感じていた。
「そんなこと言ってる場合か? 奴が嗅ぎ付けたということは当局にも知られてるんだぞ!」
「どのみちクーデターは囮です。 魔法を旧世界で公開し混乱した隙に二十年前の真相を明らかとしてメガロメセンブリアの現体制は潰します。 彼女達には新しい体制の一員になって欲しかったのですが。」
クルトはもう完全にメガロメセンブリアを潰す気でいた。
現体制とそれを築いた歴史全てを否定してメガロメセンブリアの歴史を終わらせることで、地球への移民を加速させる気なのだ。
新しい魔法使い達の象徴的な存在として、本当に世のため人のために働く悠久の風には地球側に移民をした魔法世界の人間達を纏めて欲しいとクルトは期待していた。
流石に自分達だけで全て纏めていけると思うほどクルトは愚かではなく、地球への移民を果たしたらある程度協力できる者達を増やすつもりでは居たらしい。
かなり一方的で都合がいい話だが、歴史の真相を明らかにすれば悠久の風には他に手がないのも事実で、放っておいても地球と魔法世界人達の融和を目指して動くと期待していたようだ。
「しかしタカミチは本当に動きませんね。」
「ゲーデル! もう魔法世界を捨てたタカミチの話をしてる場合か!」
「落ち着きなさい。 当局は私達が動くまで止めませんよ。 彼らが欲しいのは私の首と赤き翼を叩き折る機会なんですから。」
ただクルトは悠久の風すら動いた現状でも高畑の動きが丸でないことを訝しげに考えていた。
同じ環境で育ち同じ理想がある高畑は、必ず何処かで出てくるとクルトだけはまだ考えている。
しかしクルトの側近ですら高畑は魔法世界を捨てたと語るように、メガロメセンブリアの中枢なども高畑はもう動かないかもしれないと考えていた。
正直メガロメセンブリア中枢などは高畑はクルトにうんざりしたのではとすら見ていたが。
メガロメセンブリア中枢とて魔法世界の問題や将来を案ずる者は居るが、クルトに一番うんざりしてるのは彼らだった。
高畑にクルトを押さえるように頼めないかとメガロメセンブリア元老院の穏健派などは割と真剣に検討した程で、安易に動かずクルトと距離を置いた高畑の評価は皮肉なことに上がっている。
悠久の風のエレーヌ・ルボーンは高畑を守ることに神経を尖らせているが、元老院の中では高畑まで巻き込むことは否定的な者が意外に多い。
高畑と高畑の庇護者である近右衛門を巻き込めば地球側の反メガロ感情を悪化させるばかりか、ヘラス帝国に問題への介入の口実を与えかねないのでクルト一派とは切り離すべきだという考えが主流になりつつあった。