麻帆良祭への道

「マスター! おやつちょうだい!」

インテリアの方向性が正式に決まると、鳴滝姉妹や裕奈などが厨房に押しかけていた

話し合いが終わったのだから、約束通りにおやつが食べたいと騒いでいるのだ


「お前ら、こんなに早く決めれるなら始めからやればいいだろうに……」

テンション高く騒ぐ彼女達には流石に若干押され気味の横島だったが、それでも嫌な顔はせずに持参したクーラーボックスから桃のゼリーを出すと彼女達に渡していく

そのあまりにもあからさまな彼女達の態度に、夕映などは少々不快感を持ったようだが横島は全く気にした様子がない

まあかつては横島自身も彼女達のような感じだったし、仲間にも彼女達のような者が多かったこともあるだろう

飴と鞭ではないが欲求に忠実なタイプの扱い方は、横島本人も横島の中に居る彼女達も得意だったのかもしれない


「ソフトクリームも帰りにあるから、もうちょっと頑張って細かいこと話し合えよ」

手慣れた様子で鳴滝姉妹や裕奈をコントロールする横島に、高畑よりも教師に向いてるのではと感じる者も少なくなかった

前回の定期テストでの明日菜の成績アップの実績もあるし、横島本人はさほど意識してないのだがクラスのまとめ役として地味に期待を集めている

そんな横島の行動で一番助かっているのは他ならぬあやかであり、横島の軽さや適当さの割に2-Aのクラス全体に好感を持たれてる理由の一つでもあった


「美味しいわ~ 生の桃使ったんやね」

そのまま2-Aの全員にゼリーが渡され休憩を兼ねたおやつタイムになるが、生の桃を使ったゼリーはやはり好評である

ちなみにこのゼリーの桃は、色や形が悪い規格外の桃を使えないかと考えてる物だった

季節的にぎりぎり旬が始まる頃なだけに、上手くいけば安く出来るはずである


「いろいろ考えたんだけど、簡単に味の違いを出すには缶詰より生が一番だったんだよ」

出来るだけ素材の味を活かすには生がよかったと語る横島だったが、木乃香や超達以外は全然聞いてなかった

賑やかに騒ぐ2-Aの少女達は美味しければ細かいことはどうでもいいらしい

結局その後もいろいろと賑やかな一同だったが、横島の飴が効いたのか話し合いは比較的スムーズに進んでいく



「横島さん付き合わせてゴメンね」

「気にしなくていいぞ。 俺は暇だったからな」

さてそんな風に仮設店舗では話し合いが続いていたが、横島は途中で抜け出して明日菜の新聞配達を手伝っていた

例によって夕刊の配達があった明日菜だが、大学部の近辺からだと少し離れてるため横島がコブラで手伝っていたのだ

その結果コブラで新聞配達をする女子中学生というかなりレアな光景になったのだが、横島と明日菜は特に気にしてなかったりする

明日菜はいつものように元気いっぱいに挨拶しながら新聞を配るが、配達先の家の住人の何人かがコブラで新聞配達をする光景に固まっていたのは言わなくてもわかるだろう

この結果、新聞配達をする勤労少女に外車持ちの彼氏が出来たと噂になるのだが……

まあ今更なことだった


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