二年目の春・7

「明日菜ちゃんどうかしたか?」

「いえ。別に。」

その後明日菜は一応落ち着き横島達が戻ると働きながら横島を眺めていたが、理由も分からぬまま見られていた横島は気になり声をかけていた。


「うん。 分かってるぞ。 むだ遣いはあかんからな。」

「えっ? ちょっとなんで突然お金くれるんですか!?」

「小遣いが足りなくなったんじゃないのか?」

「違います!」

明日菜とすればまさか横島が外で遊んでるか気になると言えずに黙るが、そこで何を勘違いしたのか横島は少し隠れて千円札を何枚か財布から出して手渡すと明日菜はポカーンとしてしまい慌てて返す。

そもそも明日菜が横島から小遣いを貰うことおかしいというかあり得ないことなのだが。

さよが言っていた通り外で遊んでる可能性は低いのかもしれないが、冷静に考えてみると横島も本音はさっきの大学生達が言うように女の子とエッチなことがしたいのだろうかと真面目に考えてしまったらしい。

我慢出来ないだろうと当たり前のように語っていた男の本音は少しばかり明日菜には刺激が強かったようで悩む原因になっていた。

エッチなことに対して好奇心や不安に恥じらいなど複雑な乙女心があるが、それ以上にはっきりしてるのは自分達の知らないところで横島が他の女とお酒を飲んだりエッチなことをするのはやはりもっと嫌だという気持ちだ。


「何を悩んでるか分からんが一人で悩まんと木乃香ちゃん達とか刀子さんとかに相談しろよ。」

「横島さん。 何を悩んでるか占いとか魔法みたいな力で分からないんですか?」

「見ようと思えば見えちゃうが、頼まれない限りは見ないことにしてる。 心の中で俺のこと嫌ってたりしたらショックだからな。」

そんな複雑な心情の明日菜に横島は笑いながら一人で悩まないようにと言って仕事に戻るが、ふと明日菜は横島なら自分の悩みや考えてることを見抜いてるのではと思うがそれを横島は否定した。

明日菜もまたそれは本当なんだろうなと横島を見て思う。

そもそも横島は意外に臆病なのはあまり知られてないが明日菜なら流石に理解しているのだ。


「横島さん。 あのね……」

「ただいまー!」

臆病な横島はきっと自分からは言えないのかもしれないと明日菜は横島の本音を聞こうとするが、その瞬間能天気なまき絵が帰ってくると全部ぶち壊してしまう。


「マスター! 今日は新体操の調子良かったよ!」

「そっか。 その感覚を忘れんようにな。」

帰ってくると早々に横島に今日の新体操の出来を報告するまき絵の嬉しそうな姿に明日菜は軽くため息を吐きつつ、先程言ってしまいそうになった言葉を思い浮かべて顔を真っ赤にして厨房を出ていった。

なんとなく雰囲気に流されてしまいそうだったが明日菜にはまだそこまでぶっちゃける勇気はないらしい。


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