二年目の春・7

この日の横島達の夕食は中華であった。

超包子が麻帆良では有名でもあるし香りの強い中華は店ではあまり日替わりでも出すことはないが、日々の夕食には普通に出すし木乃香達に中華を教える意味もある。

まあ横島の店は中華仕様の厨房ではないので若干作り方や手間が違う部分もあるが。


「へ~、高畑先生の弟子になったんだ。」

「うむ。 強くなる為に修行するアル。」

なおこの日は高畑が古菲と豪徳寺達をそのまま夕食に連れてきていたので賑やかとなっていて、彼女達が高畑の教え子になった話題で盛り上がっていた。

戦闘民族である古菲は相手が強ければ強いほどやる気を出すので心の底から嬉しそうだが、それを見た刀子は少しだけ何とも言えない表情をする。

高畑も少し困った表情をしてるので刀子からあえて言う必要はないのだがあまりに脳筋な古菲に不安はあるのだろう。


「刀子さん! 私達も古菲みたいになろうとすればなれるの?」

「不可能じゃないけど体が筋肉質になるわよ。」

「じゃあ、いらない!」

桜子なんかは少し古菲の強さが羨ましいようで自分も修行すればと想像して刀子に尋ねてみるが、筋肉質の体になると言われるとそんな姿の自分を想像してあっさりと考えを放棄した。

強くて格好いい女には憧れるらしいがムキムキの筋肉質な体にはなりたくないのが乙女心なのだろう。

まあ実際神鳴流なんかは無駄な筋肉は付けないようにするので古菲の格闘技ではなく神鳴流でも習えばいいのかもしれないが桜子には向かないと刀子は心底思う。


「桜子ちゃんは魔法使いとか錬金術士には向くんだがな。」

「そうなんですか?」

「前にも言ったけど幸運も不運も本人の行動により引き寄せられる部分もあるし、そう言った潜在的な力による部分もあるんだよ。」

ただそんなアッサリと強くて格好いい女を放棄した桜子に横島は笑いながら魔法使いや錬金術士には向くと言うと桜子本人よりも周りが興味を示す。

現代日本で生きるには必要ないが桜子の幸運は魔法や錬金術などの確率で必ずしも表しきれない分野だと予期せぬ道を切り開く可能性なんかがある。

誰かが天才は99%の努力と1%の閃きと言ったが凡人はいくら努力をしてもその1%に手が届かないのだから。

尤も横島自身は自分を凡人に入れてるが端からみれば横島も十分凡人ではないのは今更だが。


「あの、マスター。 横から済まないが少し質問していいか?」

「えーと、いいっすよ。」

ただこの時横島は少し抜けていて古菲と豪徳寺達が居るのに桜子の幸運について語ってしまったことで、特に豪徳寺が驚き興味を示してしまった。


「魂というのはやはり存在するのか?」

「存在しますよ。 豪徳寺さんの使う《気》というのも東洋的には《内気》という内なる力。 すなわち根源は魂ですから。」

「では文献などにある煉丹術などをすれば仙人になれる可能性も?」

「そこまでいくと正直なんとも。 ただ魂の存在は魔法関係だと契約とかもあって存在が認知されてますよ。」

礼儀正しく勤勉な不良の豪徳寺に真面目に聞かれると知らないと突っぱねることも出来ずに横島は基本的なことは教えるが流石に仙道などの仙人になる術については口をつぐむ。

なんというか教えたら本当に仙人になっちゃいそうで横島も怖かった。




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