二年目の春・7

「おっ? 今のは良かったよ。」

一方この日高畑は古菲と豪徳寺達に修行を頼まれ魔法協会の地下の訓練施設に来ていた。

以前本格的に高畑の教え子にならないかと話して以降少し考えたようだが、彼女達はより高みを目指したいと魔法協会に加わる決意を固めている。

まあ教え子と言ってもそれぞれにすでに自分のスタイルがある古菲達なので、高畑が教えるのは基礎である力の使い方くらいで後は手合わせをしながら軽くアドライスするだけだったが。

偶然か必然か高畑の教え方は最近横島が高畑にしてることそのものになる。


「世の中上には上が居るとはよく言うが。」

「僕を上だと思ってはダメだよ。 正直今の僕でも子供扱いする人を何人か知ってるしね。 君達が本当が僕を超える日がくれば会わせてやれるかもしれない。 本当の高みにね。」

しかしまあ高畑は素直に楽しそうであり、正直クルトのことが完全に頭から消えた訳ではないが明日を担う若者達が努力し強くなろうとひた向きな姿を見るとホッとする部分もあるのだろう。

そういう意味では元々固めていた覚悟をエレーヌ・ルボーンに再確認されただけなのかもしれない。


「高畑先生を子供扱いって……。」

「その人達なら多分今の君達の力量でも僕に勝てるはずだ。つまり君達も戦い方次第では出来るんだよ。無論今までのように技術や経験を積み重ねることも大切だけどね。」

対する古菲は高畑を子供扱いする相手と聞いて某戦闘民族のごとくオラワクワクするぞと言いたげだったが、豪徳寺達は流石に次元の違う話に唖然とする。

高畑はそんな豪徳寺達に単純な力では図れない世界を語り豪徳寺達の可能性を語ることで彼らにより広い視野で考えて欲しいと期待していた。


「少し具体的に聞いてもいいですか?」

「そうだな。 僕の攻撃は基本的にシンプルで単純だからね。 読まれやすいというのはある。 魔法と違い何の前触れもなく後ろに攻撃したりは出来ないしね。 その人は僕の攻撃を読んで動いてたよ。」

一同の中でも特に豪徳寺は自身で過去の文献などからこの世界では魔法と同じ扱いを受ける《気》について見つけ再現してしまう勉強家であり、仲間達の力も元々は豪徳寺が教えたものになる。

故に豪徳寺は今の実力で高畑に勝つ術の一端を尋ねたのだが、あまりに基本過ぎるというかそれは理解してるが出来ないとしか言えない方法で何とも言えなくなる。


「まあその人達は別格だから参考にはならないかもしれないけどね。 可能性としては十分にあるということだよ。」

無論高畑もそんなことは理解していて確かに横島は一般の魔法使いレベルの力量で高畑に勝ったが、一般の魔法使いにはない圧倒的な基礎技術と実戦経験もあったことは確かでそれがない豪徳寺達には無理なのも理解はしていた。

ただ可能性として有るか無いかで言われると有り得ることであり、かつての自分のように単純な力ばかり求めないようにと参考までに話したに過ぎないが。


「精進したまえ。 体も技も心も頭の中もね。」

よく心技体というが高畑は実戦ではそれにプラス頭の中も鍛えねばならないと考えていた。

特に古菲は。


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