二年目の春・7

「こうして見るといろいろあるですね。」

さて午後になると木乃香も戻ってきていて横島は木乃香と夕映と共に店の営業の傍らで麻帆良祭の出し物に使える茶碗やお椀に使い捨て容器のカタログやサンプルなんかを見ていた。

今のところ普通のひつまぶしとワンコひつまぶしの双方をまだ検討しているが、問題はワンコひつまぶしの手間をいかに簡素化出来るかになる。

特に今悩んでるのはどのような器に入れて提供するかであった。


「使い捨てはやっぱダメか」

「見た目がちょっと……」

一番いいのは洗う手間がない使い捨てなのだが横島達が考えていたよりちゃんとした容器も中にはあるが、はっきり言えば使い捨てだと安っぽく見えて仕方ない。


「お出汁も問題やね」

そしてもうひとつの出汁を入れる物も地味に問題になる。

普通に急須のようなものが最上ならば最低は紙コップになるが紙コップだと風情も何もなく始めから器に出汁も入れて出した方がマシだった。

春祭りの際には麻帆良亭の屋台で使い捨ての容器を使ったのでいけるかなと横島も考えていたが、イメージというか麻帆良亭という看板があればこそ使い捨て容器でも安っぽく見えないが文化祭の出し物にすると思うと安っぽく見えて仕方ない。

それと料理の違いもまた大きく丼のような容器に一杯入れる料理なんかだと料理のボリュームもありいいのだが、ワンコひつまぶしスタイルだとどうしても容器のサイズに対して料理が少ないため容器が目立ってしまうのだ。


「業務用の食器洗い機でも借りるか?」

「その前に昨年の来客数から予定販売数を想定して考える方が先でしょう」

アイデアはいいしインパクトもあるワンコひつまぶしだが問題はやはり手間であり、何処まで手間を減らせて去年のような混雑があっても営業出来るかが鍵となる。

盛り付けなんかは計量カップなどでご飯の量と乗せる具を予め決めておけば考えなくても盛り付けが可能になるのでなんとかなりそうだったが、ワンコひつまぶしの鬼門は容器になるようだった。

夕映は昨年のデータと売れ行きなどから尤も忙しくなるお昼時と夕食時がどうなるか計算を始めたが、横島と木乃香はそれを見ながらサンプルの容器にご飯と具材の代わりにとお昼の和風ランチ用に焼いて余っていた焼き鮭をほぐしたものを乗せてみて見た目を考えていた。


「こういうお弁当の容器みたいな感じでお椀ないんやろか」

「聞くだけ聞いてみるか」

ただ使い捨てが全てダメかと言われるとそれもまた違い、お弁当用の容器なんかは木目調のデザインがしていたりして見た目的には使えないこともない。

一番の問題はワンコひつまぶしに合うようなちょうどいい小振りな使い捨て用の器がないことだろう。

この辺りは早めに考えないとダメなので明日の月曜の朝一で雪広グループに容器を相談してみるしかなかった。

理想とすれば白は論外で黒か木目調の使い捨ての小振りな容器であるが、仮に特注になるならいくらかかるかも気になるし出来映え次第では本当に業務用の食器洗い機を並べた方がいいかもしれないのでこの辺りは横島達だけではどうしようもないことだった。



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