麻帆良祭への道

「世界樹とはそもそも通称ネ。 正式名は蟠桃という中国の伝説にもある木ヨ。 九千年に一度成る実を食べると不老不死になると伝説もある木ネ」

イマイチピンと来ない木乃香と五月に説明する超だったが、魔法の存在を知る横島がわざわざ蟠桃を名物にしようとする大胆さには驚きであった

まあ別に蟠桃の木であることは隠してる訳ではないが、それを売りにしようとする大胆さには驚きを感じるようだ


(真偽の貞かではない伝説など珍しくないし問題ないカ…… お伽話を真に受ける人はいないヨ。 それどころか胡散臭い伝説を売り物にすれば逆に魔法の存在の秘匿の一躍買う可能性も……)

一見危険にも見える蟠桃の名前の商品化だが、実際お伽話の伝説など信じる者はいない

加えてあまりにもあからさまな商品化は噂や伝説を陳腐にしてしまう

仮に魔法の漏洩などがあったとしても麻帆良が伝説を売り物にしてれば、その情報の価値は著しく下がってしまうのだ

超は横島がそこまで狙ったのかと疑っていた


「それで例のデザートだけど、こっちも桃にしてみたんだわ。 蟠桃風ゼリーってどうだ? これで貴女も不老不死になれる!って売り文句でさ」

一方超の思考がフル回転する中、横島は桃のゼリーをクーラーボックスから取り出す

それは大きめにザク切りにされた白桃がゼリーで固められてる桃のゼリーであった

とても美味しそうなゼリーなのだが、名前と売り文句があまりにも陳腐と言うかインチキ臭い


「なんか名前が微妙やね」

「そうですね」

「インチキ臭いヨ」

横島は結構いいアイデアだと自信があった蟠桃風ゼリーだが、木乃香・五月・超には微妙に不人気な名前であった

ちなみに《蟠桃風》と付けたのは、伝説の蟠桃に似てると言われる同じ名前の桃が実際にあるからである


「そっか? 結構自信あったんだけどな」

料理の味や隠された思惑は別にして、ネーミングセンスが悪いという致命的な欠点があるのは昔と変わらないらしい


「マスコットキャラとか作れば面白いと思ったんだがな~」

蟠桃の木や実を売り出す気満々の横島は少し残念そうだが、木乃香や五月は蟠桃風の名前には抵抗があるようだ


(この商品は地味に私の計画の邪魔になるヨ)

一方の超は横島が伝説を売り物にすると自分の計画に影響が及ぶ可能性に気付き、地味に反対の姿勢をとっていた

それほど致命的な障害になるとも思えないが、ただでさえ認識阻害の結界があるのに伝説を安売りすれば超の計画の微妙な障害になる可能性はあるのだ



ちなみに横島は現時点ではもちろん超の計画までは知らない

ただ蟠桃を売り物にした時の麻帆良への影響は一応考えており、魔法協会の邪魔にならない結果になることだけは確信している

基本的にこの手の噂や伝説を観光などの売り物にする手段は割とよくあり、蟠桃を売り物にしてもせいぜい色物の観光客向けで終わるはずだった

別に横島は魔法協会の将来まで考えてはいないが、当然彼らの邪魔になる行動だけはする気がなかった

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