二年目の春・7
「そうか。 ご苦労じゃったな。」
高畑が麻帆良に帰って来たのは夕方に差し掛かる頃だった。
すでにエヴァも近衛邸には居なく一人で麻帆良祭絡みの報告書を少し読んでいた頃に高畑が報告に来ていた。
「代表にはクルトのことは諦めろとはっきり言われましたよ。」
「相変わらずはっきり言うのう。 じゃがそれ故に多くの信頼を集めるか。」
「はい。」
悠久の翼のエレーヌ・ルボーンへの接触は概ね成功と言えて近右衛門も報告に安堵の表情を見せたが、高畑にはっきりとクルトを諦めろと言ったと聞くと流石に驚きの表情を見せる。
近右衛門も詠春も横島もそこまではっきりと言えなかったことをエレーヌはあっさりと言ってしまった。
しかしそれは二十年前の戦争から今の今まで最前線で戦い続ける彼女だからこそ言えることなのだろう。
「はっきりと言われましたよ。 代表に。 自分は僕を庇うことで精一杯だと。 学園長にも万が一の場合にはとは言いましたがそれまでは何もしないで欲しいと言ってました。 それも僕を巻き込まない為かもしれません。」
「それもあるかもしれんのう。」
今回のエレーヌとの久々の再会で高畑は自分が今も守られてる側なことを再認識して少し悔しさも込み上げて来ている。
もう誰も失わない為に二度と大切な人を失わない為に高畑は強くなろうとがむしゃらに生きてきたが、未だに自分は守る側から抜け出せていないことには流石に悔しさがあるようだ。
「高畑君や。 君の悪いところじゃな。 一人で考え一人で成そうとする。 ワシとて今回は庇われてる側じゃろう。 例え彼女に何か他の理由があろうともな。 それにエヴァや横島君とて時には守られる側になる。 何も悔しがることなどないはずじゃ。」
そんな高畑の心中を察したのだろう。
近右衛門は少し穏やかな口調で高畑を諭すように語り始める。
目の前で師を見捨てねばならなかった高畑の心中を近右衛門なりに察してはいるが、未だに若さからか少し視野が狭いとも感じる。
「それにな高畑君。 子はいつまで経っても子である事に変わりはない。 ルボーン殿にとって高畑君は我が子のようなものなのじゃろう。 子の未来を何より守るのは当たり前じゃぞ。」
「……そうかもしれませんね。」
忸怩たる想いの高畑であるが近右衛門は不思議とエレーヌの気持ちが理解できた。
きっとエレーヌは高畑を我が子のように想いその幸せを願っているのだろうと。
そして高畑もまた仮初めではあるが明日菜という娘が出来たことで今なら近右衛門の言葉を心から理解することが出来るようになっている。
「そう心配することもない。 ルボーン殿と悠久の風は土偶羅殿に頼んで見守って貰っている。 ワシも彼女を犠牲にする気はないからの。」
そして近右衛門は最悪の事態も考慮し土偶羅にエレーヌと悠久の風の監視と、特にエレーヌに関しては間違っても死なせたり失脚させぬように介入することまで検討していた。
高畑が麻帆良に帰って来たのは夕方に差し掛かる頃だった。
すでにエヴァも近衛邸には居なく一人で麻帆良祭絡みの報告書を少し読んでいた頃に高畑が報告に来ていた。
「代表にはクルトのことは諦めろとはっきり言われましたよ。」
「相変わらずはっきり言うのう。 じゃがそれ故に多くの信頼を集めるか。」
「はい。」
悠久の翼のエレーヌ・ルボーンへの接触は概ね成功と言えて近右衛門も報告に安堵の表情を見せたが、高畑にはっきりとクルトを諦めろと言ったと聞くと流石に驚きの表情を見せる。
近右衛門も詠春も横島もそこまではっきりと言えなかったことをエレーヌはあっさりと言ってしまった。
しかしそれは二十年前の戦争から今の今まで最前線で戦い続ける彼女だからこそ言えることなのだろう。
「はっきりと言われましたよ。 代表に。 自分は僕を庇うことで精一杯だと。 学園長にも万が一の場合にはとは言いましたがそれまでは何もしないで欲しいと言ってました。 それも僕を巻き込まない為かもしれません。」
「それもあるかもしれんのう。」
今回のエレーヌとの久々の再会で高畑は自分が今も守られてる側なことを再認識して少し悔しさも込み上げて来ている。
もう誰も失わない為に二度と大切な人を失わない為に高畑は強くなろうとがむしゃらに生きてきたが、未だに自分は守る側から抜け出せていないことには流石に悔しさがあるようだ。
「高畑君や。 君の悪いところじゃな。 一人で考え一人で成そうとする。 ワシとて今回は庇われてる側じゃろう。 例え彼女に何か他の理由があろうともな。 それにエヴァや横島君とて時には守られる側になる。 何も悔しがることなどないはずじゃ。」
そんな高畑の心中を察したのだろう。
近右衛門は少し穏やかな口調で高畑を諭すように語り始める。
目の前で師を見捨てねばならなかった高畑の心中を近右衛門なりに察してはいるが、未だに若さからか少し視野が狭いとも感じる。
「それにな高畑君。 子はいつまで経っても子である事に変わりはない。 ルボーン殿にとって高畑君は我が子のようなものなのじゃろう。 子の未来を何より守るのは当たり前じゃぞ。」
「……そうかもしれませんね。」
忸怩たる想いの高畑であるが近右衛門は不思議とエレーヌの気持ちが理解できた。
きっとエレーヌは高畑を我が子のように想いその幸せを願っているのだろうと。
そして高畑もまた仮初めではあるが明日菜という娘が出来たことで今なら近右衛門の言葉を心から理解することが出来るようになっている。
「そう心配することもない。 ルボーン殿と悠久の風は土偶羅殿に頼んで見守って貰っている。 ワシも彼女を犠牲にする気はないからの。」
そして近右衛門は最悪の事態も考慮し土偶羅にエレーヌと悠久の風の監視と、特にエレーヌに関しては間違っても死なせたり失脚させぬように介入することまで検討していた。