麻帆良祭への道

次の日、いよいよ仮設店舗は2-Aの生徒に渡されるが……


「うわ! 広いね~」

「本当にこれ貰っていいの!?」

鳴滝姉妹を始め若干勘違いしている者数名が、高いテンションでフロアーを走り回っていた

一応ここで自分達が営業するのは理解してるらしいが、あまりにも本格的な店舗に彼女達はすでに麻帆良祭が成功したかのように喜びを爆発させている


「騒がないで話し合いに参加して下さい!!」

現在一部欠席者を除いた2-Aのクラスメート達が仮設店舗にやって来ており、インテリアの話し合いを始める予定だったのだが騒ぐ彼女達の影響で話し合いどころではなかった

あやかはなんとか話し合いに持って行こうとするが、悪のりをする者達が騒ぎ出すと収拾を付けるのは難しいらしい


「相変わらず元気だな~」

「マスター、なんかおやつ持って来たの!?」

中学生とは思えないテンションで騒ぐ彼女達の元に店を早く閉めた横島が大きなクーラーボックスを二つ抱えて来ると、騒いでた者達の興味は一気にクーラーボックスに移っていく

なんと言うか日頃横島が彼女達にどう思われてるか分かるような行動だったが、横島本人は特に気にしてる様子はない


「おう、いい物持って来たからちゃんと準備しろよ」

クーラーボックスの中身を見たがる少女達に自信ありげな笑みを見せた横島が厨房に向かうと、騒いでた者達は手の平を返したように話し合いに積極的になる


「すでに2-Aの扱い方を熟知してるですね」

「子供扱いされてるだけじゃない?」

おやつをエサに作業をさせようという横島の分かりやすい意図に簡単に引っ掛かる鳴滝姉妹達に夕映は苦笑いを浮かべてるが、ハルナは自分達が子供扱いされてる事実に少し不満そうだった

最もハルナは横島が2-Aのみんなを女として見ないとつまらないと考えているため、不満そうなだけなのだが……



「何を持って来たん?」

一方厨房では木乃香と超と五月が、話し合いをそっちのけで横島の持参した物を覗きに来ていた

横島が麻帆良祭用のメニューを持参したと彼女達は気付いていたようである


「デザートの試作品ってとこだな」

好奇心に目を輝かせる三人を前に、横島は多少自信ありげな表情でソフトクリームの機械を動かし始めた

そのままクーラーボックスから二種類の白い液体をを取り出すと、そのままそれぞれ別にソフトクリームの機械に入れて稼動させる


「ソフトクリームの準備をして来たのカ? 一つはバニラでもう一つは……」

横島がソフトクリームを作ろうとしてるのは分かるが、超はバニラの他の味がなんなのか考え込む

横島の性格上何か一捻りあると深読みしてるようだった


「そっちは桃の味だよ。 いろいろ考えたんだけど、麻帆良と言えば桃が一番だろ」

「何で桃が一番なん?」

「この辺りに桃の産地はないはずですが……」

ソフトクリームに桃の味を選んだ意味が分からない木乃香と五月は首を傾げるが、超だけは即座に気付いたようでハッとしている


「なるほど世界樹のことネ。 桃を蟠桃の実に見立てる訳カ」

「さすが麻帆良の頭脳だな。 上手くいけば麻帆良の名物になるかもしれんからな」

世界樹の意味を知る超は横島の考えに僅かに微妙な表情を見せるが、横島には全く気にした様子はなかった


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