二年目の春・7

「あすなちゃんえをかくの?」

「そうよ。 麻帆良祭で絵を飾るから中学の最後くらいは参加しようかと思って。 タマちゃんをモデルになってほしいんだけどいい?」

美術部にてキャンパスを貰った明日菜はそのまま横島の家の二階にある年末年始に寝泊まりしていた部屋を借りて絵を描く準備をするが、大きなキャンパスが気になるのかタマモと白いハニワ兵が一緒に着いてきていた。


「あすなちゃんわたしをかいてくれるの? やったー!」

何を描くのかと興味津々なタマモと白いハニワ兵に、明日菜がモデルになって欲しいと頼むと二人は嬉しそうにはしゃぎあれこれとポーズを決めていく。


「二人とも普通にしてていいわよ。 いつもの様子を描きたいから。 そうだ。 タマちゃん達もお絵描きしてたらどう?」

「うん! わたしもえをかく!」

その何処かで見たようなポーズを連続していくタマモに思わず笑い出してしまう明日菜であるが、流石に妙なポーズで描くのはちょっとと思うらしくタマモと白いハニワ兵をリラックスさせる。

実は明日菜は白いハニワ兵は描くつもりはなかったのだが、彼はどうやら一緒に描いて貰えると勘違いしてしまい期待した瞳で喜んでいるため一緒に描いてやることにしていた。

二人がリビングから折り畳み式の小さなテーブルを持ってきてスケッチブックに楽しげに一緒にお絵描きを始めると、明日菜は久しぶりだなと思いながら自身もキャンバスと向き合いタマモと白いハニワ兵を描き始める。


「私の絵は下手だから店にある絵みたいなの期待しないでなよ。 あれはプロの画家さんが描いた凄い絵なんだから。」

絵の構図に関しては特に決めていなかったが、お絵描きをするタマモと白いハニワ兵があまりに楽しそうなのでそのまま描くことする。

一瞬ハニワ兵を描いて大丈夫かと悩むもどうせ絵だしまあいいかと描き始めていき、時折自分達の絵がどうなったのかと覗きに来るタマモと白いハニワ兵にあまり期待しすぎないようにと苦笑いを浮かべて言い聞かせながら久しぶりの絵を描くことが明日菜は自分でも不思議なほど楽しいと感じる。

元々一年の頃に少しでも高畑との繋がりと一緒に居る時間が欲しくて入部して始めた美術部なだけに、明日菜が絵を描く時は寂しさをまぎらわすように描いといたのかもしれないと今更ながらに思う。

もしかすれば寂しいと感じずに楽しんで絵を描くのは初めてかもしれないなと思うと、寂しいとの一言が言えなかったあの頃が何故か懐かしかった。


「あすなちゃんのえもおみせにかざりたいね!」

「ぽー!」

「えー! それはちょっと恥ずかしいわ。 せめて二階かタマちゃんの部屋で勘弁して。」

そのまま結構長い時間明日菜は絵を描き続けるもタマモは飽きることなくお絵描きをしていて同時に今日のお散歩であったことなんかを話していたが、ふと明日菜の絵も店に飾りたいと言い出すと流石に明日菜は困った様子でそれだけは止めて欲しいと頼み始める。

タマモとしては大好きな明日菜が描いてくれた絵をみんなに見てもらいたいらしいが、どう考えても場違いにしかならないと明日菜自身は思うらしい。

それでもちょっと不満そうになかなか納得しないタマモに対して明日菜はあれこれと機嫌を取りながら、なんとか店に飾るのだけは勘弁してくれるように説得することになる。




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