二年目の春・7

「うわ……。」

「俺達、場違いじゃねえ?」

清十郎が突如言い出した食事会は会場が麻帆良ホテルのパーティルームとなり監督コーチにベンチ入りメンバーがほとんど来てくれていて、流石の大学生達も緊張というか戸惑ってしまうほどのメンバーだった。

通常あまりないことではあるが松岡選手の500号のお祝いとして監督コーチやベンチ入りメンバーを誘ったことからほぼみんな来たらしいのだが、誘ったのが雪広清十郎だというのも大きいのだろう。

横島も麻帆良に来て以降いろいろしているが影響力という面ではやはり清十郎は桁が違いすぎた。


「ここのホテルも凄いですね。 急に来て百人以上の料理が出てくるなんて。」

「ほんとやわ。」

一方違うところに感心していたのは木乃香達である。

日頃から横島の店にて仕入れや発注から調理まで苦労している彼女達からすると、 電話一本で一時間もしないうちにホテルに到着して和洋中と様々な料理が並んでいるのだから。

無論手の混んだ料理は後から出てくる物などもあるが、何よりすでに時間は夜十時を回っていてそんな時間にこれだけの料理を作る食材と人が居ることに驚きだった。


「それでは松岡選手の500号をお祝いして乾杯!」

さて乾杯の音頭は清十郎が取っていて、少女達はジュースだが他はお酒が入ると今日の試合が勝ったこともあり監督コーチや選手達は上機嫌の様子だ。

大学生達は場の雰囲気に慣れると選手達に積極的に話し掛けたりとすぐに会場は賑やかになる。


「へー、芦コーポレーションのオーナーなのかい。」

「いや、親の遺産をちょっと出資しただけなんっすよね。」

横島に関してだが清十郎に呼ばれて監督コーチに挨拶をしていたが、実は現在球団の公報活動の一貫としてSNSカグヤと連動した企画が進んでるらしい。

もちろん横島は知らなかったが雪広コンツェルンが仲介した形での企画らしく意外な繋がりがあり横島はペコペコと頭を下げていた。

余談だが芦コーポレーションに関してはあまりの業務の急成長に伴い雪広と那波から人員を借りて対応している。

技術者を中心に新卒は両社や学園と魔法協会のつてや推薦でかなり雇用したが中間管理職や幹部社員などの人材は明らかに足りずに、雪広コンツェルンと那波重工からの派遣にて間に合わせていた。

社長がいくら土偶羅の分体とはいえ一人でやれる規模では無くなっていて、新規の事業のかなりの部分が雪広と那波が絡む仕事か両社からの紹介による仕事なのでそれが一番手っ取り早く確実だったのだ。

未だ株式の上場すらしてないベンチャー企業である会社の信用を保証してるのは雪広と那波であり、信頼できるIT企業として今も仕事が激増しててんてこ舞いになってる。

インターネット通販事業もほとんど雪広と那波の協力により実現したし、スピード感ある会社の発展は見方によっては雪広と那波の下部企業に近いのではと見られていた。

まあ雪広と那波にそんな気は更々ないが。

それはさておき芦コーポレーションの発展と共に横島が知らぬうちに関わりがある人達が増えてるのが現状であり、わざわざパーティやなんかに出てこいとは言われないが今回のように会う機会があると挨拶くらいはしないと後々困るのは横島なので清十郎に挨拶をさせられていた。

無論一般的な企業からすると大企業の会長に目を掛けられて紹介までしてもらえる姿を見たら羨ましいどころの話ではないだろうが。



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