二年目の春・6

「本当なんですか!?」

スポンサー巡りを終えた横島が店に戻るとすでに刀子来ていてみんなでの夕食となるが、この日刀子から横島と少女達は伝えられた話に少女達はざわめいていた。


「らしいわ。 私も直接経験してないから見てはないけど二十一年前にもあったみたい。 ただ当時は現在みたいに麻帆良祭が大きな規模じゃなかったからなんとかなったらしいけど。」

それは今年起こる二十二周期に一度の世界樹の魔力の大放出に合わせて一定の魔力の濃度が高い場所で告白すると、どんな相手や関係でも恋が成就してしまうという近年では毎年麻帆良祭近くになると生徒達が騒いでいる都市伝説が本当に起こるという情報だった。


「むむ、マスターが危ない!」

「アホか! 流石にそんな呪いみたいな魔法に漬け込むような真似はせんわい!」

「違うわよ。 逆よ逆。 告白されないように気を付けないとダメってこと。」

そう言えば去年そんな伝説を聞いたなと思い出した横島は近右衛門か誰かがちらりと今年の問題を話していた気もするが、聞き流していたらしく改めて聞き驚いている。

一方の少女達は年頃らしく絶対に成就する呪いの告白に騒ぐも桜子が横島が危ないと叫ぶと、横島は悪用なんてしないと即反論するが円に逆の話だと爆笑されながら訂正される。

横島とすれば昔厄珍堂の惚れ薬で痛い目に合ったことが頭過り少し懐かしくなるも、いい年した大人になってみると流石に相手の気持ちを無視して惚れさせるなど有り得ないなと思うようだ。

しかし少女達はそんな横島が告白されるのではと割と本気で心配していた。


「いや俺はないだろ。 一応大人だぞ? みんなの方がやばい気がするが。」

正直横島の霊格だとその手の洗脳とも取れる契約は多分効かないがそれを少女達は理解してなく、横島とすれば自分が告白されるより少女達が告白される方が心配のようである。


「どっちも気を付けてね。 シャレにならない威力みたいだから。」

「それって蟠桃を介した一種の契約っすよね? 効果を弱める魔法をかけて中和か可能ならば無効化すればいいんじゃないんっすか?」

「強力過ぎて無理だそうよ。 エヴァンジェリンさんが受けた呪いみたいなものかしらね。」

告白すると絶対に成就するという話に夢があると考える者と好きでもない人に告白されたらと思うと怖くなる者に分かれる少女達だが、横島はそんな厄介なものは無効化してしまえばいいと軽く話すものの刀子いわく既存の魔法協会の技術では無理らしい。


「俺とアナスタシアでやってみましょうか?」

「また面倒なことを……。」

「いいじゃんか。 このままだと麻帆良祭楽しめなくなるだろうが。」

近右衛門達は告白を阻止することに頭を抱えていると刀子から聞いた横島がアナスタシアを巻き込んで先手を打ち対策をしてしまおうかと提案して刀子と少女達を少しだけ驚かせる。

厄介事に関わりたがらない横島にしてはやけに積極的だなと思うが、なんてことはなくただ自分達が麻帆良祭を楽しむ為に厄介事を先に片付けたいだけらしい。

巻き込まれたアナスタシアは魔法の開発が面倒らしく気が進まないようだが、土偶羅が収集しているこの世界の魔法技術の情報をアナスタシアが使えばさほど苦労はなく無効化すること魔法は作れるだろう。

横島単独ではやはりまだこの世界の魔法の術式をきちんと理解してないので魔法協会に開発した魔法を教えるならばアナスタシアがやった方が早い。

無論横島自身も協力はするつもりだが。

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