麻帆良祭への道

「あの人強かったわ~ 古ちゃんとどっちが強いんやろ」

人だかりを離れた二人だったが、喧嘩などほとんど見たことない木乃香はリーゼント男の強さに驚いていた

そんな木乃香の強い人間の基準は古菲らしい


「うーん、多分だけど古ちゃんの方が上だろうな。 武道大会か何かの優勝者なんだろ?」

「やっぱり古ちゃんは別格なんやな~」

正直別格と言うほどの実力差はないだろうが、明らかに古菲の方が強いのは確かだろう

ただ木乃香が身近な人間で一番強いと感じてる古菲より強い人間が、周りにゴロゴロしてることには気付いてないようだ


「横島さんはあんまり強そうやないね」

古菲や先程のリーゼント男と比べると横島はお世辞にも強そうには見えない

なんと言うか強い人間が持つ独特の空気が横島にはないように木乃香には見えていた


「まあな。 喧嘩とか昔っから苦手だしな~ おかげで逃げ足だけは早くなったよ」

強そうに見えないと言われて否定もせずに逃げ足が得意だと笑って自慢する横島に、木乃香はクスクス笑ってしまう

決して喧嘩が強そうには見えないが、何故か安心出来るような空気を持つ横島が木乃香は嫌いではなかった



(あの男、何をしたんだろうか?)

一方離れた位置から木乃香を護衛している刹那は状況的に横島が何かしたと気付いていたが、流石に何をしたのかは見えなかったようだ

実はあの時刹那も横島と同様に、相手が刃物を使おうとしていたことに気付いていた

ただ横島と違ったのは人前だったこともあり介入出来なかったことである

周囲に魔法関係者はおらず、あの時介入出来たのは近くに居た横島だけだった


(あの人が多い場所で誰にも悟られずに介入するとは…… 予想以上の実力者か?)

正直刹那の横島に対する評価は必ずしも良くはない

木乃香と親しくする横島に対する嫉妬めいた感情もあり、どこか怪しい人間としか見ていなかった


(それほど悪い人間ではないのかもしれないな)

今回の件で刹那の横島に対する印象が僅かだが改善されている

元々横島はそれほど深く考えて助けた訳ではないのだが、結果的に刹那の印象を僅かに改善させるきっかけにはなったらしい

ちなみに横島が助けた理由だが、特に理由などなくつい助けてしまっただけだったりする

刹那が尾行していることなど最初から気付いていた横島は、霊力を最小限に抑えて介入する為に爪楊枝に霊力を少しだけ込めて飛ばしたようだ

まあサイキックソーサのように霊力だけを物質化して飛ばすことも無論可能なのだが、軸に刃物などの物質を用いた方が霊力の消費も少なく威力も上がる

今回は別に爪楊枝でなくても髪の毛でも糸屑でもよかったのだろうが、手元にあったのが爪楊枝だっただけだろう



「それにしてもあの男、尾行には気付くそぶりもないな」

実力者の割に尾行には反応一つしない横島に、刹那は若干不思議そうだった

流石に始めから気付かれてるとは考えてないらしく、無警戒な男だと少し呆れていた

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