二年目の春・6

一方女子中等部ではテスト間近ということでこちらもまたテスト対策などが授業として行われていた。

比較的楽観的な少女が多い3ーAであるが、それでもテスト前はそれなりに真剣になるようで何時にも増して真面目に授業を受けてる少女が多い。


「サンプルを幾つか用意したネ。 あとは具体的な内容をみんなで検討してほしいヨ。」

そしてこの日のホームルームにて超鈴音が麻帆良祭で使用する立体映像のサンプルを幾つか持参しており、クラスメートに披露しようとしていた。

立体映像に関しては海中の映像だけならば過去に撮影された物が幾つかあり大学部で海洋や魚介類の研究につかわれているのだが、そこに竜宮城という架空の建物を想定した空間の立体映像は当然あるはずがない。

ただこちらは昨年と同じく大学部にて立体映像の活用や運用の研究をしているサークルや学生達が制作した物を借りれるようで、暫定的にいくつかの種類の建物を海中の背景に組み込んだ物を用意している。


「うわぁ、凄いね! でも竜宮城がなんか海中らしくないような。」

「その辺りはこれから調整するネ。 今回は竜宮城のデザインを選んで欲しいヨ。」

僅か数日でサンプル程度の質の物だが竜宮城の立体映像を持ってきた超にクラスメート達は驚くも、その内容は想像以上に海の中の魚や珊瑚などがリアルな反面で竜宮城の出来はまだ海中に上手く合わせてなく違和感があった。

もちろんそれには理由があり、竜宮城と見える建物の立体映像を幾つか暫定的に海中の立体映像に無理矢理に加えて竜宮城の形を選ぶ為に作ったサンプルだからである。


「これがいいんじゃない?」

「こっちがいいな!」

竜宮城に関しては東西問わず城らしい建物のサンプルが幾つかあって中には昨年のようなRPGっぽい城もある。

少女達は順番に披露されるサンプルを見てあれがいいこれがいいと悩むが、ふとのどかは超と葉加瀬はいつ勉強しているんだろうという疑問が頭を過る。

この二人常に一年から学年トップと二番の成績を連続していて超鈴音に至っては全て満点なのだ。

ただ魔法という存在を知り未来という世界から来た超鈴音のことを思うと、本当に超鈴音は自分達と同じ年齢で同じ時間勉強だけしているのか疑問が生まれてしまう。


「のどかどうかしたのですか?」

「うん、どうすれば超さんみたいになれるのかなって。」

そんな悩む友人の様子に気付いた夕映が声をかけるとのどかは素直に自身の中にある疑問を口にした。

もしかすれば横島やエヴァのように本当の年齢が違うのかもしれないし、人間ですらないのかもしれないとすら思う。

決して口には出さないが超鈴音よりは茶々丸やハニワ兵の方が人間らしく生きてる感じがのどかにはある。


「そういえばそこの秘密はまだ聞いてませんね。 ただ魔法か科学か何かで合理的に記憶する術はあると考えた方が自然かと。」

一方の夕映は超に関しては年齢はさほど高くなく恐らく見た目のままだろうと見ていた。

未だ超の失敗した計画の詳細すら知らされてないので不確定要素があるものの、横島や高畑の態度から察するに超はまだ自分達と同じ子供だろうと見抜いている。

しかし夕映は超が何か特殊な方法で知識や技術を得ている可能性が高いことも気付いている。

頭の良さや知識の次元が違うことも理解はしているが同じタイプの横島がよくうっかりミスをすることも知っている以上、超は睡眠学習のような特殊な方法で機械的に知識や技術を得ているのではと考えていた。


「前からあんまり幸せそうじゃないよね。 超さんって。」

超にどんな秘密があり魔法公開の計画を阻止された現在何を考えてるか今ののどかには計り知れない。

ただ超が昔からあんまり幸せそうじゃないことには気付いていた。

悩みがあるなら打ち明けてくれればという言葉が今にも口から出そうになるも、木乃香の気持ちを思うと軽々しく口には出せずに立体映像のサンプルを眺めることになる。


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