二年目の春・6

結局四越デパートの麻帆良フェアの件は後日改めて話し合うということで持ち越しとなりその日の話は終わる。

そして翌日以降も横島はテスト勉強シフトとでも言うようなテスト予想の山かけリストを配ったり勉強を教えたりしていくことを中心にすごしていくが、数日が過ぎた早朝には庭の畑で今年初の収穫を迎えようとしていた。


「まだちいさいよ!?」

「これはこの大きさで食べ頃なんだよ。」

今年の初収穫も昨年同様に二十日大根であった。

ラディッシュという呼び方もあるこの二十日大根はとにかく収穫が早く手間もさほどかからないので今年も植えたらしい。

大根と聞くと昨年の冬に植えたあまり育たなかった大根を思い出すタマモはどう見てもあのときの大根より更に小さな二十日大根に不安げだが、横島が一つ抜いてみてこれで食べ頃だと教えると興味深げに見つめクンクンと匂いを嗅ぐ。

しかも収穫はみんなでやろうとタマモは二体のハニワ兵も連れてきており、猫達を求めて朝の散歩で訪れた茶々丸三姉妹も交えてみんなで収穫している。


「初めての実戦です。」

「久しぶりの新しい任務です。 燃えます!」

ちなみに茶々丸三姉妹のうち初音と鈴江の二人は初めての収穫に何故か少し異様なほど喜びや興奮する表情を見せながらタマモの両隣りでしゃがみこみ収穫をしていた。

この二人に関しては超鈴音の拠点から押収してなし崩し的に茶々丸に妹として与えたが、基本的に何か仕事や任務がある訳でもなくぶっちゃけると留守番くらいしかさせてない。

掃除や洗濯は茶々丸と一緒にやるし、さほど広くもないエヴァ宅ではやることなど限られている。

特に家主のエヴァとチャチャゼロは日中ほとんど横島の店か家に行ってるので余計に暇らしく、最近になり仕事や任務が欲しいと言い出したのでここしばらくはチャチャゼロが一緒に横島の家に連れて来ていた。


「大丈夫か? 優しく抜くだけでいいんだぞ。」

「問題ありません。 農場ゲームで鍛えた腕前を見せる時です。」

「農場ゲーム?」

「ぽー。」

結果として二人は横島宅でテレビゲームをすることに最近ハマってるらしく、ハニワ兵いわく対戦物からシミュレーション物まで幅広く遊んでるらしい。

一応ノーマルなハニワ兵に裁縫を教わりそちらも多少出来るようになったらしいが、チャチャゼロが面白がってゲームをやらせていたらハマってしまったと聞き横島は何とも言えない笑みを浮かべていた。

オーバーテクノロジーの申し子である二人は、横島がAIをいじったせいかオリジナルの茶々丸よりも自由奔放になりハニワ兵のようになりつつある。

別に問題はないのだがハニワ兵と人形とアンドロイドが当然のように寛ぐ我が家に少し思うところがない訳ではない。

何故かいろんな存在の溜まり場になりつつある我が家に、かつて言われたもののけに好かれやすいという言葉が頭を過り少し懐かしさが込み上げてもいたが。


「まあ、いっか。」

どうせなら少し何か仕事でもやらせようかと一瞬考えた横島だが、子供のようなボディである二人を平日の日中に店で使うのもまずい訳で何もやらせる仕事が思い付かないのでこのままでいいかと放置することにした。


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