二年目の春・6

「すいませんがオーナーシェフにお目にかかりたいのですが。」

一方横島の居ない店では週末ということもあり学生や年配者などで賑わっていたが、サラリーマン風のスーツを来た中年男性がオムライスを一人で食べて完食した後に突然横島に会いたいと言い出し応対したさよを驚かせる。


「申し訳ありません。 オーナーの横島は現在外出してまして。 ご用件ならば私が伺うです。」

「ではこの料理を作られたシェフの方でお願いします。」

困ったさよはフロアーを仕切る夕映に助けを求めるとさよに代わり夕映が応対するが、中年男性は少し考えた末にシェフに会いたいと言い出す。


「そのオムライスを作ったのウチです。 お口に会わなかったでしょうか?」

「……これを貴女が?」

「はい、ウチが作らせて頂きました。」

何事かと驚いたのはさよばかりではなく店内の常連達も同じで少し静かになった店内で中年男性は注目を集めてしまうが、厨房から木乃香が現れて今度は木乃香が男性への応対をすると男性の表情が驚きというか困惑に変わる。


「あの、申し訳ありませんが責任者の方は……。」

「責任者は私で横島は夕方には戻る予定です。」

「はあ、そうですか。 実は私は四越デパートの催事部の千葉ともうします。 本日は弊社が予定している麻帆良フェアに貴店の出店をお願いしたいと参りました。」

中年男性が困惑したのは店が未成年の子供達により営業されていたことのようで少し迷ったようであるが、最低限用件くらいは残していかねば後で横島が戻った時に不快に思われるかと思ったようで応対する夕映と木乃香に名刺を渡して事情を説明し始めた。

四越デパートは銀座に本店を構えるデパートで知らぬ者など居ない有名デパートであり、毎年麻帆良の名物や美味しい店を集めた麻帆良フェアという催事を行っている。

今回そのイベントへの出店要請にお願いに来たらしい。


「ああ、四越デパートの方でしたか。 麻帆良カレーの件ならば実行委員会にて出店が決まったはずでは?」

「ご存知なのですか?」

「あっはい。 私は麻帆良カレー実行委員会に所属してます。」

ただ夕映は四越デパートと聞くと思い当たることがあるらしく話をしていくが、実は麻帆良カレーが同イベントに出店することが決まったと実行委員会から聞いている。

四越デパートの千葉はまさか未成年の子供がと驚くも夕映が必要に迫られて作った実行委員会の名刺を渡すとキョトンとしていた。


「そういえば未成年の子が実行委員会に居ると聞きましたが、まさか中学生だとは……。」

「当店から派遣した人員として形式的に入ってるだけですから。」

千葉も麻帆良カレー実行委員会に未成年の子がメンバーになっていて活躍してる話は噂程度だが聞いていたが、あまり詳しく聞いてなかったので高校生辺りだと考えていたらしい。

麻帆良では超鈴音の存在や木乃香に夕映達の存在もあって結構認知されているが、一般的にはやはり中学生が社会活動をさはてるのは驚きや違和感がある。

夕映は名前だけだと語るもまだ一般に公表されてなく四越内でも知らぬ者が居る四越の催事への出店など実行委員会関連の情報は一通り知ってることには驚きを隠せない。




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