二年目の春・6

「竜宮城アルカ?」

「立体映像で出来ないでしょうか?」

翌日は平日で少女達はいつもと同じく学校に登校するもまき絵は時差ボケならぬ日付けボケの様子を見せていて他の少女達を少しヤキモキさせていたが、あやかは早速異空間アジトで出たアイデアである竜宮城の件について超鈴音に尋ねていた。


「ふむ、海関連の立体映像は工学部と千葉麻帆良の海洋学部との共同でテストとして撮影したのがあるにはあるヨ。 ただ竜宮城と言われるとさすがに無いが、他のCGなんかを合わせると何とかなるかとは思うネ。」

「そうですか。 では実現可能か検討して頂けますか?」

「了解ヨ。 どうせ謹慎中で暇だから任せるネ。」

修学旅行の一件以降僅かに距離がある超とあやかだが、お互いに多少含むところはあっても完全に嫌いな訳でも敵対したい訳でもない。

従って表面上は以前と変わらぬ様子の二人は昨夜横島の店での夕食の際に出たアイデアとしてあやかが実現可能か検討を頼むと超は快く引き受ける。

現状で彼女は謹慎中なためあまりやることもなく暇だったこともあるし、加えて計画が完全に頓挫して事実上この世界に残る決断をしたため以前と違いクラスメートに対する認識や態度が僅かばかり変化してもいた。

特に葉加瀬の為にも超自身が率先して和解というかあやか達の抱く疑念を払拭しなければならないと考えているし、この先のことを考えれば近右衛門に庇護を求め自分達の安全をまず確保しなくてはならないと考えている。

誰が何処まで何を知ってるのか分からぬ以上は、まずはクラスメートであり麻帆良の中枢に近いあやか達の信頼を取り戻すことは必要不可欠だと判断してるらしい。

打算と言えばそれまでだがこの世界で生きていき革命的な行動をしないとなればそれなりの庇護者は必要であるし、自分達の態度いかんでは近右衛門ですら危険視するのは明らかであり殺されることはないかもしれないが記憶の消去の可能性が完全に消えた訳ではないのだ。

麻帆良祭への協力は新たな人生を模索している超にとって絶好のチャンスであった。


「竜宮城ね~。 いいんじゃないの?」

「賛成ー!」

このあと朝のホームルームで一応クラスメート達の意見を聞くものの、特にこれといった意見ややりたいことがなかったクラスメート達は考えるまでもなく賛成して竜宮城の飲食店が最有力候補として実現化の可能性や予算などの検討を始めることになる。


「あれ、まき絵腕時計してるね。」

「うん! マスターから貰ったの!」

ちなみにまき絵は腕時計をニヤニヤと嬉しそうに裕奈に見せていてさっそく横島から貰ったことを暴露していた。

まき絵としては魔法の秘密は言ってはならないと理解しているものの横島からのプレゼントを貰ったことは嬉しくて自慢したくて仕方ないらしい。


「そういや木乃香達も最近腕時計ずっとしてるよね。」

「うん! みんなも前に貰ったんだって。 私も欲しいって言ったらくれたんだよ!」

裕奈はこの時初めて横島に近い少女達の共通点に気付くが、特に代わり映えのしない腕時計が何故そんなに嬉しいのか不思議そうであり、亜子はまき絵が余計なことを言わないかとハラハラしていた。



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