二年目の春・6

昼食後はシャワーを浴びて身体についた海水や砂を落とすなどしばらく時間がかかる。

男性ならともかく女性の場合は髪をセットするし化粧も最低限するので当然であるが。


「ねえ、マスター何してるん? 」

「亜子ちゃんか、これは初音と鈴江のデータチェックと調整してるんだよ。」

そんな女性陣を待つ横島はといえば、まだ稼働して間もない初音と鈴江のデータチェックと調整をしながら時間を潰していた。

今回魔法やら何やら知らされていろいろな事を知らされたばかりの亜子はシャワーを終えると、初音と鈴江座らせてノートパソコンで何かの作業をする横島に何となく興味を抱く。


「データチェック?」

「二人はガイノイドっつうか、女性型アンドロイドだからな。」

「ええー!? そうやったん??」

「ああ、そこも言ってなかったか。」

最近までというか一昨日の夜に魔法の存在を打ち明けるまでは麻帆良を包む結界による影響で魔法やそれに類似する物を若干だが気にしないように仕向けられていたが、ここ異空間アジトにはそんな結界はないし自らの意思で魔法を認識すると効果がなくなる程度の認識逸らしなので亜子は初めて初音や鈴江がガイノイドだと知り驚きを隠せないらしい。


「それって大発明やないん?」

「まあな。 この二人は特別だけど近い将来には普通に人型ロボットが普及するかもな。 世の中に与える影響がでかいから学園長先生達は苦労してるよ。 説明すると複雑なんだけどこの二人の技術は魔法に関係した訳ありなんだよなぁ。」

まき絵ほどおバカではない亜子は初音と鈴江の姿にその影響力を理解するが、彼女の場合はまだ単純に世の中が便利になり良くなるくらいにしか考えてない。

ただオーバーテクノロジーの塊であるアンドロイド技術は下手すると世の中のバランスを壊しかねないほどなので慎重にならざるを得ず、まして発明したのが超鈴音ということになる以上扱いが難しく近右衛門達の悩みの種でもある。


「難しいんやね。」

「世の中いい人ばっかりじゃないからな。 身近なとこだと超さんも実は以前から魔法を知ってて先月には問題を起こしてるんだわ。 だから悪いけど超さんと葉加瀬さんにはハニワランドのことと初音達のことは特に秘密にしてくれ。」

平和な街で優しい人々に支えられてる亜子やまき絵に友人である超達を悪く言うのは気が引ける横島であるが、今のうちに亜子くらいには気を付けるように言っておかねばならなかった。

現時点で横島は超鈴音をさほど警戒も危険視もしてないが、ならば仲間として温かく迎えるかと言われるとそんな気はあまり起きない。

何かの拍子に自分のことが超鈴音に中途半端にバレて彼女を惑わしたり下手な希望を抱かせることをしたくないというのもあるし、亜子やまき絵を含む少女達を魔法世界なんぞに関わらせる気はもっとない。

そもそも生まれ育った世界を忘れて見捨てろというのがいかに難しいかは横島自身よく理解しているのだ。

今は大人しい超鈴音であるが将来はどうなるか分かったものではなく、そういう意味では横島は自分の身近な少女達をあまり超鈴音に関わらせたくないとの思惑もある。


「うん、ええけど……。」

「詳しく知りたかったら今度教えるよ。 話せることと話せないことはあるけどな。 夕映ちゃん辺りの方が説明するなら分かりやすく教えてくれるかもしれんが。」

横島の話は魔法やハニワランドという夢と希望で彩られていた亜子に微かな不安を与えるが、同時に自分とまき絵以外は知ってることで納得してると聞くと少し安心していた。



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