二年目の春・6

「波の音が聞こえるね。」

横島の元カノと噂になっていたアナスタシアとタマモの正体に驚き騒いだまき絵と亜子であるが、彼女達がようやく落ち着くとふとした瞬間別荘の中は静かになり波の音が聞こえた。

別荘と庭は照明があるので明るくその分だけ敷地の外は暗くて見えずに漆黒の闇に包まれているものの、波の音だけは静かに聞こえてくるのだ。

風が吹き抜け波の音が聞こえる環境は麻帆良では経験出来ないものであり、少女達に得難い経験として残るのかもしれない。


「うわ~、みんなも魔法使えるんだ!?」

「夕御飯の後とか練習してたから。」

横島は高畑とエヴァとチャチャゼロ相手に枝豆をつまみにしつつビールで一杯やっていたが、少女達の方は刀子に指導してもらい久々に魔法の練習を始めていてまき絵と亜子が興味深げに見ている。

特に今夜は夕映とのどかに美砂など昨日の胸を大きくするには気の使い方を覚えるのも多少影響があると聞いた、一部の少女が今までにないほど熱心に練習してた。


「私もやりたい!」

「あー、そのままじゃ出来んぞ。 みんなは腕時計を杖の代わりにしてるから。」

「えー!?」

「時計は帰るまでに用意しとくよ。 とりあえずこっちの杖で練習してみようか。」

その光景に当然ながらまき絵と亜子も興味を示して魔法の練習に加わろうとするも、少女達は腕時計型通信機を魔法発動体として杖の代わりにしているので横島はまき絵と亜子には最初少女達が使っていた子供用の杖を二人に貸してやる。


「その時計最近みんないっつも付けてたと思ったら。 マスターのプレゼントだったんだね!!」

そのまま魔法の練習をする輪に加わる二人だがまき絵は最近横島に近い少女達がデザインは違うがみんな腕時計を欠かさずつけてることに気付いていたらしく、やっぱり横島からのプレゼントだったんだと少し不満げな表情を浮かべた。

腕時計に関しては携帯電話もある昨今では付けてない人が多くホワイトデーの後から突然付ける少女達が増えたことにまき絵は怪しいと感じていたらしい。


「みんなのはバレンタインのお返しだったんだって。」

「私もバレンタインあげたじゃん!」

「いや、あれちょっと秘密の機能が付いてるからさ。 帰るまでに二人にもあげるって。」

みんなが持ってる物を自分と亜子だけ持ってないことに特にまき絵は不満らしく横島に詰め寄りズルいと抗議する。

相変わらず女の子に責められるのが弱い横島はタジタジになりながらまき絵をなだめていくも、そんなまき絵の姿を見ていた少女達は早めに秘密を明かして正解だったと確信していた。

良くも悪くも無邪気なまき絵は裏表どころか遠慮すらなく自分の気持ちに素直に生きているが、それ故に秘密を嗅ぎ付けたり嫉妬から騒ぎ出す可能性も決して低くはなかったのだと目の前で横島に詰め寄る姿から痛感する。


「分かったから抱き付くなって! こらタマモが真似するだろうが!」

「わたしもまぜて!」

一方横島の方だが瞳をうるうると抗議するまき絵がどさくさに紛れて横島に抱きついてしまい、それに感化されたタマモと桜子も抱きついて来たので、まるでお小遣いをねだるために娘に抱きつかれるお父さんのような光景になっていた。



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