二年目の春・6

食後はデザートにと南国のフルーツを堪能した少女達はそれぞれ自由に過ごすが、部屋の中にはまだ片付けてない細々とした荷物が結構あって半数はそちらの片付けに追われていた。


「食器棚オープン。」

なお収納に関しても充実していてクローゼットや食料や食器の棚なんかはキッチンなどと同じで床に収納されているので、手動で壁にあるスイッチを押すか音声で可動させる。

始めは子供のように可動させたり収納したりと遊んでいた少女も居たが、慣れると普通に便利であり棚やクローゼットに物をいれていく。

あくまでも別荘でありここに住み着く訳ではないのだが食器や雑貨に掃除用具に衣類など、物は意外に多くなり片付けるのも一苦労だった。


「ここ私達が居ない間はどうするの?」

「ハニワ兵に管理して貰おうと思ってる。 掃除は定期的にしないとダメだし来る度に掃除に時間取られるのもあれだろ?」

いろいろ考えて物を揃えたがいざ片付けてみるとまだあれこれと足りない物が出てきてしまい、明日にでも再び買い物に行かなくてはとなるが掃除を含めた別荘の管理は専門のハニワ兵に頼むらしい。


「あれー!? なんでエヴァンジェリンさんが居るの!?」

住みやすい異空間アジトとはいえやはり自分達の帰る場所があると嬉しくなるようで少女達は楽しげに部屋のインテリアや家具の配置を変えたりとその後もしていくが、一足先にタマモと一緒にお風呂に入ったアナスタシアがエヴァの姿に戻りお風呂から出てくるとまき絵と亜子が驚きの声をあげる。


「あー、そのことも説明してなかったですね。 アナスタシアさんとエヴァンジェリンさんは同一人物なのです。 魔法で大人の姿になっていただけですから。」

驚かれたことにエヴァ本人を含めて周りも逆に驚き、そういえばエヴァのことを説明してなかったことを思い出す。

横島が非常識過ぎる存在なことと最近は日を追うごとに少女達に溶け込んで違和感がなくなっているので忘れていたが、彼女もまた少女達とは立場が違う存在なのだ。


「泣く子も黙る魔法世界の魔王様なのよ! その正体はなんと真祖の吸血鬼なんだから! 貴女達も油断してると血を吸われちゃうわよ!!」

「えー、またまた。」

「冗談きついわ。」

横島同様に説明が面倒なエヴァのことについて夕映はアナスタシアと同一人物だということでとりあえず済ませようとするも、ここでまたまたハルナが二人を脅かすようにエヴァの正体を暴露してしまったがまき絵も亜子も全く信じてなかった。

それもそのはずで目の前のエヴァはタマモとチャチャゼロと一緒に三人並んで、風呂上がりのフルーツ牛乳を腰に手を当ててグビグビと飲んでいて魔王様の威厳はゼロだったのだ。


「……本当なのですよ。 血を吸うのは見たことないですが。」

「嘘!?」

「あとタマちゃんも実は妖怪さんなんよ。」

「ホンマに!?」

まあ言い出したのがハルナであることも信じられない一因であり、夕映と木乃香が改めてエヴァとついでにタマモの正体を明かす

しかし風呂上がりに冷たいフルーツ牛乳を飲み満足げな魔王様と傾国の幼女の姿を見て信じろという方が無理があるようで二人は何度も確認しても半信半疑らしい。


「このタイミングで正体明かしてもね。 まさかそれを狙ったのかしら?」

そのまま少女達は本人達を巻き込んで脱線しながら盛り上がっていき、少々鬱陶しそうにしながらも相手をするエヴァと何故か自慢げに狐形態に戻って見せるタマモの姿を見ながら刀子はふと考え込む。

今のエヴァの姿を見せるとそれだけで魔法世界の常識が根底から覆すほどの衝撃を与えそうだと感じながら、ハルナは何故このタイミングで暴露したのか少し気になった。

まさかこうなることを狙ったのか少し聞いてみたい気がした。



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