二年目の春・6

「ねえ、今日このままあっちに行けない?」

「別に構わんが? 向こうで話すのか?」

「見せた方が早いわね。」

そのままハルナは言葉で話しても真剣に受け止め理解させるのは難しいだろうと判断したのか、急遽異空間アジト行きを横島に提案するも横島は驚きあやかは本当にいいのかと戸惑いというか迷いの表情を見せる。


「ハルナさん貴女何を……?」

「セオリーで言えばいいんちょのやり方が正しいわね。 でも亜子はともかくまき絵はそれじゃ理解しきれないわよ。 それに秘密秘密って言えば結局好奇心が勝って聞きたくなるだけだって。 ならいっそのこと現実を見せた方が早いわよ。」

基本的にハルナがこの手の問題で自ら動くことは今までになく横島やあやかのみならずほとんどの少女が驚いているが、一番親しい夕映とのどかはハルナが実は冷静に状況を見極める力があることを超鈴音の一件で理解しているので驚きはなく静観していた。


「高畑先生、刀子さんどう思います?」

「最終的には横島君次第だけど連れて行っていいんじゃないかな。 本当の順番は逆だけど結果は多分変わらないし手っ取り早いというならそうだと思う。」

「貴女が言うと説得力があるわね。」

あやかが迷い始めたのでハルナは高畑と刀子にも確認すべく問い掛けるも、高畑はかつての仲間で非常識なことには慣れてるようで冷静であり刀子はなんというか一番問題を起こしそうなハルナが言うと説得力が違うと苦笑いを浮かべる。

正直ハルナに関しては魔法や横島の秘密を教えていいのかと大人達が最後まで悩んだだけに味方にしておいて良かったと刀子はしみじみと感じていて、こういうイザという時に動けるタイプは敵に回すと意外と厄介だと経験上理解していた。


「ねえねえ、秘密ってなに? 特典は?」

「ふふふ、みんなケーキ食べちゃって後片づけが終わったら分かるわ。 二人ともビックリするわよ!」

一方自分達の目の前で話される秘密という言葉や特典という言葉にまき絵と亜子は好奇心や期待に加えて僅かな不安を感じていたが、周囲の説得を終えたハルナは意味ありげな笑顔で二人にこの先起こることを示唆するような言葉を口にすると他の少女達も巻き込み秘密は何なのかクイズのように考える二人を周りは暖かく見守っていた。


「しかしハルナちゃんは意外だったな。」

「ハルナは超さんの時間移動の問題点も正確に理解してましたから。 今回のこともまき絵さんと亜子さんの為というよりは自分が今までと同じく楽しく生きる為なんでしょうが。」

その後食後のちょうどいい話題となった秘密で盛り上がる少女達を見ながら横島は木乃香達と後片づけを始めるが、ハルナの行動は横島も意外であり改めて驚いていた。


「それでいいんだよ。 要は自分の利益と友人の利益を擦り合わせればいいんだからな。 案外根っこの部分は俺と似てるかも。」

夕映いわく今回のハルナの行動もまき絵や亜子の為というより自分の為というより部分が内心にあるのだろうと語るが、横島はそんなハルナに悪い感情を一切抱くことなくむしろ少し懐かしさを感じている。

自分やかつての仲間達なんかはハルナのように自分の利益が行動の根底にあり、木乃香達や他の少女達のように純粋でいい人など唐巣くらいしか居なかったのだ。

意外に本音を話す機会がなかったので知らなかったが価値観や話はもしかするとハルナの方が会うのかもしれないとすら横島は思う。


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