「美味しいね～。 やっぱ家庭じゃ作れない味だよ！」

その後も賑やかな雰囲気のまま誕生パーティーは続いていき、横島・高畑・エヴァ・刀子・チャチャゼロにドジなハニワ兵などは料理に合わせてかワインなんかを飲んでいる。

ただ何故か若さからかお酒が入ってない少女達の方がテンションが高く、大きな塊で三つほど用意したはずのローストビーフは次々と胃袋に消えていく。


「でもさ、他のだと意外とパッとしない時あるのよね。」

「うんうん！ パサパサしたのとか牛肉臭いの食べたことある。」

ステーキなどと違い基本的に赤身を使うローストビーフは食べやすく少女達でも食が進む料理であり横島もそれを見越して多目に作っていたが、ふと誰かが他で食べるローストビーフの話になると少女達が食いついたように意見を続ける。

一般的にはホテルのバイキングや結婚式から最近ではスーパーでまで売っているが、味は本当に素人が食べても分かるほどピンからキリまであった。

無論少女達も横島の料理と同じような料理を他で食べれるとまでは思ってないが、あまりに差があることに疑問を感じるようである。


「ローストビーフって結構難しい料理なのよ。 パサパサするのは調理が上手くないことが原因の可能性が高いし、臭みは肉の選び方一つで味が変わるわ。 国産の和牛なら臭みも少なく赤身にも程よい脂があるからそれだけで美味しいもの。 外国産の牛肉は原産国によって微妙に違うけど肉らしい臭みが少しあるから調理が難しいと聞くわ。 これは多分国産の和牛じゃないかしら？」

「流石っすね。 確かにうちのローストビーフは国産の牛肉使ってますよ。 単純に日本人の舌に合いますしね。」

ワイワイとあそこのローストビーフは美味しかったとかあそこのはイマイチだったと店の名前を上げて批評していく少女達であるが、そんな中ローストビーフの難しさを語ったのはやはり美味しい物を幼い頃から食べなれてる雪広さやかであった。

調理の難しさに加えて料理の性質上から肉の美味しさも重要な料理である。

横島の場合は誕生パーティーということで肉も最高級とまでは言わなくても手に入る中では高品質の国産の和牛を使っているし、ローストビーフにつけるソースもオーソドックスな物から少し和風のあっさりした物まで用意しているので食が進む。

ただまあぶっちゃけると美味しい牛肉はどんな料理にしても美味しいとも言えて、横島の場合はあえてそれをそのまま味わえるような料理を好む傾向にあった。

その点ローストビーフは程よく熱の入った肉の美味しさがダイレクトに味わえる上にさっぱりしてるので少女達のような若い女性にも人気のメニューと言える。


「極端な話をするとお刺身だって新鮮なお魚を捌いただけなのに、お魚の選び方から絞めたり捌いたりする技術で味が変わるもの。」

「木乃香凄いじゃん！」

「うちはまだまだや。 これとおんなじの毎回作れるようになれればええんやけど。」

さやかの語る料理談義に結果として本来は技術と経験を積み上げねば作れぬ料理を普通に作った木乃香の凄さを再認識する少女達であるが、当の本人は常時同じレベルの料理が作れて一人前と考えてるようで今回初めて一人で作れただけでは満足してなかった。

ただ何人かは木乃香は本当にどこに向かっているのだろうと密かに疑問を抱いていたが。

木乃香いわく料理人やパティシエをを目指してる訳ではないと言いつつ、その方向性は完全にそっち側なのである。

魔法に関しては横島の魔法料理に興味を持ち習いたいと考えているが本来の歴史にある治癒魔法に関しては正直必要性がないためかあまり興味を示してない。

結果として土偶羅は本来ならば彼女が生み出すはずの石化による回復不能者の救済が無くなる可能性が高いと判断して、別途類似する技術の向上を関東魔法協会にでもさせるように影ながら支援すべきかと歴史の行方を見ながら検討していたが。