二年目の春・6

「タマちゃん大丈夫?」

「うん!」

そのまま早めに閉店した店内では慣れた様子で誕生パーティの準備が進む。

夕映はレジ閉めを明日菜は洗い物など閉店作業をする中、タマモはすでに到着していた千鶴や夏美とテーブルをくっ付けてたりお皿を配ったりと精力的に働いている。


「おはなさんきれいだね!」

「たまにはいいでしょう?」

「うん!」

食卓となるテーブルの中央部分には花瓶に活けられた花が二ヵ所ほど飾られていて、これは元々那波重工本社の応接室などに飾られていたもののそろそろ枯れるので新しい花と取り替えられて捨てられるところを千鶴が学校帰りに貰ってきた物だった。

流石に天下の那波重工が枯れかけの花を飾るわけにはいかないので取り替えるタイミングは早く中にはまだ一日くらいは咲いてる花があるが、特に会社では使い道がある訳でもないので那波家では時々持って帰って家で飾ったりしてるらしい。


「でもちづ姉の家でそんなことしてるなんて、ちょっとびっくり。」

「勿体ないじゃない。 それに花も命なんだもの最後まで楽しんであげた方が喜ぶと思うわ。」

準備をしながら何気なく語られた那波家の節約というか花の扱いについて夏美は失礼ながら金持ちらしくないと思うも、千鶴は素直に勿体ないと口にしており特に恥じるような気持ちはないようだ。

元々那波家は祖母の代で成功したので祖母自身は学生時代まではお世辞にも裕福とは言えず普通の庶民的な感覚の持ち主である。

まあ社員にあまりガミガミと節約しろとは言わないが自身が率先して節約してることで、那波重工ではどちらかと言えば節約思考の社員が多い。


「マスターもどっちかって言うと普段は倹約家だよね。」

「みんなそんなもんよ。 ただ使えばいいというものじゃないと思うわ。 あやかは別格なのよ。」

横島に千鶴に雪広姉妹と少女達の周りには世間的に見てもお金持ちと見える人が居るが、金持ちらしいのは雪広姉妹くらいで外出すると少女達にご馳走している横島でさえも普段はそうでもなかった。

店の営業で余った食材やらスーパーの特売やらの食材を普段はよく使うし、横島の場合はお金というよりは大人の男としての見栄なんだと少女達は理解している。

そもそも横島の場合は単純にお金持ちの部類に加えていいのか夏美には分からなかったが。


「おっ、なんか本当のレストランみたいだな。」

「ほんまや。」

ちなみにタマモはよほど花が気に入ったのか厨房で調理中の横島達まで見て見てと呼びに行ってしまい、横島や木乃香達まで集まりしばし花の話題で盛り上がることになる。

費用的に横島の店では毎日飾るのは難しいが元々店の建物はいいだけに、こうして花を飾るなどするのは本当に合うのだ。

まあ横島としてはかつて食べることですらままならず花など全く興味がなかった自分が、花を見る余裕が生まれたことに少し苦笑いを浮かべていたが。


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