麻帆良祭への道

同じ頃メルディアナ魔法学校では、祖父である学校長が苦悩の表情を浮かべていた


「この程度の情報すら秘匿出来んとは穏健派も堕ちたな」

問題の発端である学校長だが、今回の結果は流石に想定外である

確かに学校長は本国元老院穏健派にネギの育成に関する協力は求めたが、本来の代償は現金などで後腐れなく払う手筈だったのだ

それが蓋を開けてみれば地球側の各国魔法協会を巻き込む騒動に発展していたのだから、学校長とすれば穏健派に裏切られた気持ちである


「わしのせいでネギにはつらい思いをさせる事になるのう」

実は学校長は事態の急変を知り何とか止めさせようと手を尽くしたが、すでに問題は学校長の手に負えない状況まで発展していた

最早悔やんでも悔やみ切れない結果となっている

学校長自身も今回の問題の深刻さを理解していたが、彼はネギに普通に幸せになれる環境を与えたかっただけなのだ

しかし今回の件でネギの置かれた立場の難しさを、世界の魔法協会に露呈する形になってしまったのだ

この先ネギがいかに成長しようとも、受け入れてくれる魔法協会は地球側には存在しなくなる可能性がある

加えてメルディアナの魔法協会の地位が著しく落ちた事は言うまでもない

古来より歴史と伝統において世界有数の魔法協会であるメルディアナだが、今回の失態で地球側魔法協会からの信頼を失うのは明らかだった

それに彼自身の魔法協会内での立場も危うくなる可能性がある

本国の元老院過激派辺りからは、ナギの父親として厄介者と見られていた学校長の失脚を狙う勢力が居ない訳ではないのだ


「ネギのことは高畑君に任せるしかないな」

現状で学校長がこれ以上出来る事は存在しなかった

近右衛門が提示した最低限の条件を受け入れて高畑に任せるしかない

学校長自身は自分の立場を守る事や各国魔法協会の疑念を晴らしたりと忙しく、これ以上ネギの事で動きようがなかったのである


この後メルディアナ学校長は関東魔法協会を始め各国魔法協会との連携を強化しようとするが、それは非常に厳しいとしか言えなかった

本国の地球側魔法協会分断工作も相まって、メルディアナに向けられた疑念が簡単に晴れる事はなかったのだ

無論地球側魔法協会は本国の工作があると理解しているが、それでも孫の為に各国魔法協会を売ったのではとの疑念が消えなかったのである

それにヨーロッパ各国の魔法協会はともかく、アジアやアフリカや南米では歴史上でイギリス人に痛い目を見た国も多く元々信用という点ではいま一つだった

加えてもう一つの当事者である関東魔法協会が、メルディアナに対して冷たい態度に変わった事も深く影響していく

結果として孫の幸せを願った祖父の強攻策は裏目に出てしまい、二つの世界を又にかける魔法協会の存在意義や未来にまで影響してしまう

そしてその問題が世界の行く末に影響を与えるほど、危険を孕んだ問題である事に気付いてる者は僅かだった



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