二年目の春・6

「メニューもまだいいアイデアないんだよなぁ。 なまじ時間があると迷うしな。」

その日の放課後にはさっそく超鈴音が五月と葉加瀬を連れて店を訪れていた。

横島側からはのどかと夕映とあやかと千鶴が参加していて麻帆良祭に関する意見交換をすることにしたのだが、昨年と違い余裕を持って準備してることが少し仇となってるのではと横島は感じている。

自身も元々計画的とは言えるタイプではないし、少女達もまたなまじ時間に余裕があるだけになかなか決められないのだろうと思うらしい。


「今のところは一般的な飲食系屋台との差別化をしたいとの意見が出てますが、今年は大学部の屋台にも類似する屋台が出る可能性が高いです。」

「さすがに立体映像は使うところはないガ、エンターテイメント性があるサークルの出し物と飲食系屋台が手を組むことはすでにしてるネ。」

なお少女達が求めたエンターテイメント性であるが、大学部ではすでに昨年の2ーAの躍進の結果を考慮して新たにエンターテイメントと飲食を同時に楽しめる屋台やイベントが計画されてるらしい。

それは割と無難なステージでショーをするようなものから昨年のファンタジーレストランを意識したような成りきり系飲食屋台まで様々な計画がされてるようだ。


「そりゃいいとこは真似されるよな。」

麻帆良の学生達はアクティブでありいいとこは積極的に取り入れ発展させていくので、今年も昨年と同じ路線でいくならばよりパワーアップが必要になる。

ただどうパワーアップさせるかが難しく悩みの種なのだが。


ちなみに超と葉加瀬も横島達も修学旅行の一件があったにも関わらず態度は特に変化はなかった。

葉加瀬はどうだか知らないが超本人はすでに一定の気持ちの区切りが出来たようであるし、横島側も横島は元々細かいことを気にするタイプではなく他の夕映達も多少蟠りがあるものの表面に出す程ではない。


「調理や接客に人型のアンドロイドを取り入れるとかハイテク化するなら可能だけど、面白味がなくなるネ。」

「ハイテク化か? 工学部の出し物ならそれがいいんだろうけどさ。 あとどう考えても資金がかかりすぎるだろ。 出せなくはないがやりすぎはなあ?」

「そうですわね。 あまり資金を出した派手な物にすれば批判や否定的な人が増えるかと。」

その後も横島達と超一味は意見交換をしていき超としては屋台に使えそうな技術はいろいろあるし、人型アンドロイドなんかを使ってやるのも話題を呼びそうだと言うものの面白味がなく中等部の出し物から離れすぎてしまうので流石に不向きであろう。

加えてあやかや千鶴に超鈴音に横島にと金を持ってる人間が集まっているので多少ならば資金面でも無理は効くが、やり過ぎると否定的な意見が学園内に広がる恐れがあった。

超鈴音は先の一件で賛否両論出たので尚更だしあやかもまた最近目立っているので、あまり露骨に金に物を言わせたような物にするといくら少女達が頑張っても評価されない可能性がある。

横島はこの点過去に散々な思いをしたので敏感であるし、あやかもまた雪広家の人間として自身の立場は理解していた。

スポンサーを集めるなど方法がない訳ではないが、ハイテク見本市みたいになるのは得策ではない。

正直超鈴音という人物は余裕のある人生を送って来た人間ではないので思考の柔軟性にやや難があり、一般的な人が普通に楽しめるという物を考えるのはあまり向かないのかもしれない。
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