二年目の春・6

「なにこれ? ハム?」

「ハムのステーキだな。 千鶴ちゃん家からお裾分けで貰ってな。」

この日の夕食は先程千鶴から貰ったハムのステーキであった。

厚さ二センチほどに輪切りにしたハムをフライパンで焼き胡椒を振ったのみのシンプルなものながら、白い皿に盛り付けると香ばしい焼き目のインパクトもありなかなか豪勢な一品となっている。

付け合わせは目玉焼きとジャガイモと人参と彩りもよく、ソースはマスタードソースにバーベキューソースに和風ソースの三種類用意していてお好みでということらしい。


「目玉焼きにちょっと塩を降ってそのままってのも美味いぞ。」

目玉焼きは黄身を半熟に焼き上げているので横島のお勧めはまずはソースを付けずに目玉焼きに軽く塩を振り、黄身を崩して厚切りハムステーキと一緒に食べることだった。

元々ハムは味が付いておりそのままでも美味しいものだが、火を通すと肉の旨や焼き目の香ばしさに胡椒がいいアクセントになり本当に美味い。


「ほんとだ。 おいしい!!」

「那波さんありがとうー!」

一般的によく食べる食材であるハムだが、こうして少しいつもと違った食べ方をすると新鮮でありハムの焼けるいい匂いも相まってご飯が進む。

付け合わせの人参とジャガイモはあっさり温野菜にしたことも少し塩気のあるハムステーキをより一層引き立てて、更にまたハムステーキが食べたくなるようである。

少女達の中には両親が若かったり職業的にもお歳暮なんかとは無縁の者も居るらしく、お歳暮やら贈り物が多い雪広家や那波家を単純に羨む者も居たが。

無論雪広家や那波家ではその分贈る側としても相応に大変なことは言うまでもない。


「あっ、ソースも美味しい。」

ハムそのものの味を味わったら今度は用意したソースをかけて食べるが、こちらはこちらでソースが加わり味に深みが増すのでまた美味しくご飯が進む。

みんなそれぞれ好みはあるもののマスタードの風味やピリ辛が食欲をそそるマスタードソースにオーソドックスなバーベキューソース、そしてアッサリとした和風ソースの三種類があればどれから好みに合致するらしく、それぞれが好きなソースを選んでかけているし中には少しずつ全種類制覇してる者も居た。


「うむ、なかなかだな。」

一方大人組のアナスタシアや刀子にチャチャゼロと横島なんかはお酒と共に夕食を取っていたが、これはこれで酒によく合うらしくアナスタシアは少し上機嫌に食事をしている。

なおここしばらくはアナスタシアが毎晩居ることで夕食中の給仕は茶々丸がしていて、チャチャゼロと一緒に横島宅の二体のハニワ兵も共に夕食を取ることに多い。

時間的にも一般人の客が居たり今日もまき絵と亜子が居るのだが、アナスタシアが認識阻害の魔法をかけてやることで普通に夕食に参加していた。

一緒にテーブルを囲むのにまき絵と亜子だけはチャチャゼロとハニワ兵には気付かない姿は周りの少女達からすると不思議な光景であり、ある意味これが魔法の現実なんだろうなと理解することにもなる。

その後も一日の出来事を話したりしながらの楽しい夕食はゆっくりと過ぎてゆき、このあとも店からはしばらく笑い声が消えないまま一日を終えることになった。

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