「横島さんは先取りはしないんですね。 前にハルナが言ってたんです。 超さんは歴史の先取りをしたんだって。」

「うーん、生キャラメルを超さんの件と一緒にされるとちょっと困るが。 」

一方木乃香とのどかは封印宣言をして歴史の先取りはしないと言う横島を好意的に受け止めていたが、横島は特に尊敬するような視線を向けるのどかに背中がむず痒くなるような思いをしながら言い訳をするように本音を語る。

横島自身はどちらかと言えば超鈴音側の人間だと思っていて必要とあれば歴史の先取りでもなんでもするつもりだ。

ただ必要がない歴史の改編や先取りは可能な限りするつもりはない。


「俺はいろいろあって出来ることが多いからな。 どっかに自分で線を引いとかないとろくなことにならないと思うだけなんだよ。」

今の横島が自由に好き勝手出来ているのはアシュタロスの遺産と土偶羅やハニワ兵達のおかげであり、特に横島の存在により世界や周辺に悪影響が及ばぬようにと土偶羅が管理調整しているので横島自身は何も考えずに済んでいる。


「そもそも倫理とかあんまり突き詰めると時間移動や世界間移動の是非にも問題が発展しそうだし、そう考えるとアシュタロスの遺産で好き勝手してる俺って超さんとやってること自体は大差ないんだと思う。」

加えてあまり倫理的な話をすると横島も自身や麻帆良の為に魔法世界を見捨てようとしてる辺り、決して超鈴音を批難出来る立場ではないと自覚していた。

元々倫理やら社会常識やらは眼中にすらないと言っても過言ではなかった令子の元で働いていた影響か、横島もまたあまり倫理や社会常識に拘ることはない。

ただ令子と違うのは根が臆病な小心者なのであまり大それたことが出来ないだけとも言えるし、土偶羅が影で動いてくれるので横島がそこまでする必要がないとも言える。


「横島さんと超さんは違いますよ。」

「うちもそう思うえ。」

少し話が逸れたが横島の超に対する認識は相変わらず一言では言い表せないものであるが、そんな横島にのどかと木乃香の二人は考える間もなくはっきりと超と横島違うと言い切る。


「私達は超さんの目的も知りませんし確かなことは言えませんが超さんが見ていたのは私達でも麻帆良のことでもないと思うんです。 でも横島さんはちゃんと私達のこと見てくれてます。 私達にとってその違いは大きいです。」

そして続けて横島と超の違いを語り出したのは日頃あまり自分の意見など積極的に言わぬのどかであり、その表情はかつて気が弱く自分の意見を言えなかった少女とは思えぬ芯の強さが垣間見えていた。

異世界で魔王アシュタロスが創造した世界へ行き、その遺産を受け継ぐ横島やこの世界で今も魔王と恐れられるエヴァと共に居ることは少女達にとって多大な影響を与えている。

超が何をしようとしていたのか未だ分からぬしきちんと話し合えなかったことをのどかは今も残念に思っているが、誰よりも優しく臆病だった彼女は超が自分達なんかの周りのことを見てるようで見てなかったのだと気づいていた。

恐らく超には超の正義が横島には横島の正義があるのだろうと思うが、だからこそのどかは横島と超の僅かな違いが決定的に違うのだと理解している。


「超さんがそのくらい考えてくれたら、俺も学園長先生達も楽だったんだけどなぁ。」

身近に居る少女がいつの間にか大人の自分より大人に見えることが横島は頼もしく感じると同時に自分もしっかりしなきゃなと思う。

ただ横島は超鈴音がのどかのように考えてくれたら自分は魔法世界の問題に悩まずに済んだのにとも思ってしまうが。