二年目の春・5

「そろそろわしらも正式にメルディアナから籍を抜けねばならんかもしれん。」

「私は構いませんが、アーニャちゃんはあそこに両親が……。」

一方魔法世界の辺境では、ネギの祖父とネカネがネギとアーニャが魔法の修行をしてる姿を眺めながら少し今後の話をしていた。

ネカネとアーニャはすでに魔法協会を脱会して魔法世界に来たので必要ないが、ネギと祖父は魔法学校卒業後の修行として魔法世界に来たので現在も名目上はメルディアナ魔法協会所属の魔法使いとなっている。

ただメルディアナは現在においてもまだ以前のような落ち着きを取り戻してなく祖父はそろそろメルディアナ魔法協会から脱会しようかと考えているらしい。

現在メルディアナ魔法協会の主導権は完全にメガロメセンブリアに握られてしまったものの、メガロメセンブリアと地球を繋ぐゲートの管理と防衛以外は彼らはあまり興味がないのか地元の魔法協会員に任せていた。

しかし予算や権限は以前と比べ物にならないほど制限されてる上に組織の衰退が激しいので、かつて祖父が居た頃を知る人間とすれば不満であり内部では不満が燻っていて権力争いまで起きている。

元々メルディアナは魔法協会の規模としてはさほど大きくなく同じイギリスの魔法協会ではイングランド魔法協会が最大規模であったほどで、あまり大きな組織でなかった上に祖父の退任以降の混乱で祖父やナギを慕い集まった優秀な人材が去ったことがメルディアナ衰退を後押ししている。

かつては祖父の人望やナギの人望で組織の規模の割には侮れない人材がそれなりに居たが、彼らはすでに散り散りとなり一部は祖父の近くの町に越してきた者までいた。

古巣の衰退に祖父は複雑な心境と責任も感じているが、孫であるネギへの長年の腫れ物を触るような扱いに加えて都合が悪くなったからと切り捨てるように追い出された身としては助けになろうとまでは考えてない。

ネカネに関しては現在の穏やかな生活が気に入ってることもあり魔法協会との完全な決別も別に構わないのだが、唯一の懸念はかつて悪魔に襲われた村の人が石化されたままメルディアナに保護されてることだった。

いくらメルディアナが衰退し混乱しても仲間である彼らを粗末に扱うとは思わないが、村の人はナギを慕い集まった人達なのでネカネや祖父としては親交があったしアーニャの両親もそこには居たのだ。

無いとは思うが治療名目でメガロメセンブリアの研究機関にでも売り飛ばす可能性もゼロとは言い難い。


「彼らは何処か安全な場所に移そうかと思っておる。 最早メルディアナに置いてはおけまい。」

ネカネの懸念に対し祖父は石化した村の人をメルディアナから移動させようと考え現在移動先を探している。

メガロメセンブリアにも人道面から石化した村の人をいずれ治療技術が開発されるまで保護すべきだと考える人や組織はあるし、祖父には魔法世界と地球側双方にそれなりにツテもあるので密かに数人に打診して回答を待っていた。

どうせ治療のアテはないのだから置いてくれるだけでいいと頼んでいて治療は頼んでない。

ネギの去就の時には失敗したが石化した村の人はネギと違い受け入れても倉庫を占領するくらいで害はないのでなんとかなるだろうと見込んでいる。


「そうですか。」

「なんとか治療してやりたいんじゃが……。」

祖父としては自分が生きてる間に治療をと考え、メルディアナに居た頃にはメガロメセンブリアは元よりヘラス帝国やアリアドネーにも自ら足を運び治療を試したがあまりに強力な石化に治療は全く成果を見せてない。

現状では何処か安全な場所で保護してもらい未来に希望を託すしか方法がなかった。

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