二年目の春・5

「それでは第二回納涼祭の会議を始めたいと思います。 今回の主要な議題は世界樹通り商店街の参加の是非についてと参加する場合の具体的な内容について検討頂ければと思います。」

会議の場所は大学部にある会議室で大学生と横島達で三十人ほど集まっていて、日頃の納涼祭の話し合いよりも人数が多く主要な関係者が全員集まったらしい。

司会進行はあやかが行っていて商店街からの打診を改めて説明して話し合いを始める。


「あそこの商店街って、確か麻帆良市運営会議の議員も居たよね? 参加の是非って言うけど断って大丈夫なの?」

「それ今関係あるか?」

「馬鹿、地元の有力者ってのは機嫌損ねると後々面倒になるんだぞ。 今はあやかちゃんが居るしなんとかなっても納涼祭を毎年続けるなら下手な敵は作らん方が無難だ。 先方も無理難題言ってるわけじゃあるまい。」

基本的に納涼祭は大学生を中心とした実行委員会のメンバーが中心なため彼らがさっそく意見を口にするが、少し事情を知るメンバーはすでに断れないことを見抜いていた。

実は商店街では麻帆良市の議会に値する麻帆良市運営会議に議員を輩出していて発言権がそれなりにある。

ちなみにこの麻帆良市運営会議は学園都市麻帆良を象徴するような特殊な仕組みの組織で、議員の半数は学園の推薦枠で学園関係者や支援企業に生徒会から人員を選んでいた。

半数は一般的な議会と同じ選挙によって選ばれて商店街からは毎回一人はほぼ確実に議員を輩出している。

元々戦前までは学園は魔法協会の自治都市のようなものだったので完全に都市の運営まで学園でしていたのだが、戦後になり民主化の流れが麻帆良にも訪れた際に行政機能を学園から切り離した結果として学園側に議会の推薦枠が現在も残っていた。

誤解されがちだが麻帆良は今も公共施設や道路などを除きほぼ全て学園の土地で、学園の内部に生徒のみならず地元の人まで住んでいるという見方が正しい。

従って学園内の整備や運営を学園が主導するのは当然だとの理屈が今日まで残っていて、その結果として複雑な都市となっている。

まあ内情は魔法協会という国際法で認められている自治権や自衛権の一部まで持つ組織に相応の権限を与える為の建前でしかないが。

なお余談だが運営会議のメンバーはボランティアのため、正式には議員でも政治家でもない。

学園と麻帆良市の運営が正しくなされているか監視する為の会議であり、無報酬なのと学園の影響力が強いことで既得権の職業政治家がほぼ居ないという利点もあった。


「計画は変更しなきゃならんが俺達はなんとかなるさ。 問題はスポンサーだろ?」

「なんとかって簡単に言うがな。 麻帆良祭も近いのに……。」

「そもそも商店街が祭りをやるのに俺達に断りを入れる必要はないんだよ。 向こうも独自に夏祭りはやれるしな。 ただやるなら一緒にして協力した方がいいって話だ。 断って向こうで独自に祭りをやって後々まで残るような不要な対立を生むのは得策じゃない。」

さて話は納涼祭に戻るが商店街の参加は事実上認めざるを得ないのが現実で、根本的な問題として商店街は歴史もあり独自に祭りを開催することも可能であった。

それをわざわざ納涼祭に参加という形で実行委員会に打診したこと自体、商店街の方でも筋を通して気を使ってる証となる。


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