二年目の春・5

「パン耳のラスク50円って儲けあるの?」

「あるわけないだろ。 手間賃考えたら赤字だよ。」

その後放課後になるといつものように店は少女達で賑わっていたが、日替わりメニューのパン耳ラスクの値段には常連の少女達も驚く。

尤も日頃からメニューには乗せてない裏メニューのパン耳のフレンチトーストなんかも格安で作ってるが、それにしても50円なんて今時ありえない値段だった。

もちろん味は手抜きしてないのでサクサクした歯応えにバターと砂糖の甘さがコーヒーや紅茶のお供に最適なのだ。


「もうちょっと値段考えたら?」

「いいんだよ。 日替わりメニューは儲けるつもりないし趣味みたいなもんだから。」

中には値段的に駄菓子じゃあるまいしと呟き思わず売り上げを心配される横島であるが、日替わりメニューは原価くらいで好きなメニューを出す横島の趣味なので今のところ変える気はないようである。

それとかつて貧乏で苦しんだ横島からすると、お財布に優しいメニューを日替わりメニューくらいは続けたいとの思いもあった。

実のところ横島が貧乏で苦しんだのは高校時代の二年間しかなく、アシュタロス戦後は少しマシになり卒業後は妙神山にて三食とも小竜姫の手料理だったので意外に貧乏期間としては短いのだが。


「料理勝負?」

「そう、超包子VSマホラカフェだって。」

「うちはちょっと不利だなぁ。 向こうは料理作れる人いっぱい居るけど、うちは任せられるの木乃香ちゃんとのどかちゃんしか居ないし。 ただその分だけ負けてダメージもないけどさ。」

そのまま売れても利益にならないパン耳ラスクが飛ぶように売れていくが、今度は厨房に居た横島の元に木乃香達が帰って来ていてこの日の調理実習で出た料理勝負の案を話していたが横島は少し渋い表情をする。

勝ち負けに拘るつもりはあまりないが超包子と対決するとなれば明らかに人員の薄さで不利であった。

明日菜や夕映もそれなりに料理を覚えて来てはいるが、お客さんに出せるレベルで考えると木乃香とのどかしか居なく助っ人にと料理上手なあやかや千鶴に茶々丸辺り頼んでも人手が足りないだろうと予測する。


「しかし超包子とうちが勝負するのがクラスの出し物でいいのか?」

「誰もそこまで深く考えてないのよ。」

加えて横島とすれば昨年も今年もクラスの出し物に協力する裏方のイメージで考えているらしいが、3ーAでは逆に横島を主力にと考えてる少女が多い。

実際去年は表向き横島はさほどでしゃばらずにやっていて終わってから人伝の噂で話題になったので、本人は今年もそのつもりだったらしいが少女達からすると話題になり儲かるならそれでいいという感じになりつつあった。


「そもそも超さん麻帆良祭最後まで居るのか? 超さんのタイムマシンだと未来に帰るには今年の麻帆良祭期間の次は二十二年後の麻帆良祭期間まで帰れんはずだが。 一応後夜祭辺りまでは居れるはずだけど。」

「そうなのですか!?」

ただここで横島は根本的な問題として超鈴音が最後まで麻帆良祭に参加するのかという疑問を口にすると、超鈴音のタイムマシンの制限を詳しく知らなかった少女達は驚き顔色が変わる。


「ああ、それと本人は知らんだろうがこの世界はもう超さんの未来には繋がってないからあのタイムマシンだとそのままじゃ帰れないんだよなぁ。 一旦二十二年前にでも戻れば帰れると思うけど。 それくらいは教えてやらんと可哀想だよな。 学園長先生達に相談せんと。」

「……横島さんも結構真面目に考えてるのね。」

あまり細かく説明しなかったせいか新事実が次々に出てきてしまい木乃香と夕映とのどかは考え込んでしまうが、明日菜は横島があまり興味無さげだった超鈴音のことを意外に真面目に考えてることに少し驚いていた。

てっきり協力はしても横島本人は興味がないからお得意の丸投げしてると思っていたようだ。
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