二年目の春・5

「木乃香サンはやっぱり凄いネ。」

「そうですね。 あの味をいつも出せるのは凄いです。」

そのまま結局みんなで料理を交換して和気あいあいと昼食にしたが、木乃香達のパスタは基本的に横島の味であり超と五月は以前食べたことがあるので覚えていた。

周囲のクラスメートは木乃香の料理に驚きはほとんどないが意外なことに驚きを感じていたのは超鈴音と五月だった。

いつもの店ではなく学校の調理室で慣れないフライパンやガスを使って店と同じ味を作れたのは、地道に木乃香の基礎技術が向上している証と言える。

しかものどかのみならず明日菜達にも調理をさせてそれを纏めたのも地味に評価が高い。


「一度本気で勝負してみたいヨ。」

「でも木乃香さんは料理勝負なんかでは本気になれないかもしれません。」

横島により急激に上げられた実力を自身の技術として着実に安定させてる木乃香に、超は思わず本気で勝負したいと考えてしまう。

昨年の体育祭の前ならばまだ勝てる自信があったし実力差は大きかったが、新堂美咲とのギリギリの勝負と坂本夫妻との出会いが明らかに木乃香にいい影響を及ぼしてるのは考えるまでもない。

だがもし仮に今すぐ木乃香と勝負しても木乃香は超が相手では実力を出し切れないのは目に見えている。


「木乃香サンにとって私は勝ちたい相手ではないからネ。 木乃香サンを本気にさせるには相応の料理と作り手が無ければダメネ。 少なくとも私は違う。」

体育祭での木乃香の活躍の原動力は紛れもなく新堂美咲にあると超は思う。

元々争いが好きではなくマイペースな木乃香を本気にさせたのは、目の前に新堂美咲という憧れるほどの存在が居たからだと考えるのが正しい。


「人を惹き付ける料理と作り手ですか。」

「横島サンも新堂先輩も本物の天才ネ。 五月はともかく私では足りないモノが多すぎるヨ。」

超はこの時木乃香に嫉妬してる自分に気付き、自身の中で密かに驚きと困惑の感情が渦巻く。

天才少女と呼ばれ完璧超人と呼ばれる彼女だが、その実態は未来の知識や技術による物でタネのある手品のようなものだと自身では考えている。

まあそもそも天才の定義を何を持って当てるかと考えると議論の余地があるのは確かだが、少なくとも木乃香のように自分が出来るかと言われると出来ない気がした。


「彼女は私の歴史においては二十一世紀では最高の治癒術師になるはずだったヨ。 治療のアテがない永久石化を始め数多くの治療を行い独自の治癒術まで開発し残していたネ。 その才能はこの時代では料理という道で花開いた。 真の天才とは何をやらせても一流になってしまうのかもしれないネ。」

自身が天才と言われるだけに誰よりも天才というモノについて考え悩む超であるが、ネギ・スプリングフィールドというこの時代のもう一人の天才には出会えてないこともあり彼女は無意識にでも木乃香に未だ会えてないネギの面影を求めているのかもしれない。

願わくば本気の木乃香と勝負して自身の可能性を試してみたいと考える超だが、本人の性格に加えて気まぐれで変人とも言える横島の影響もあり見た目と違い超のペースにほとんど乗ってこないのだ。

この二年間、超は自身がどれだけ成長したのだろうと考えると明らかに木乃香達には劣っていて未来と歴史に拘りすぎた二年間が本当に悔やまれて仕方ない。

このままでは自分はダメだと超はこの時強く感じながら笑顔の木乃香を眺めていた。

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