二年目の春・5

「生パスタとは……凄いわね。」

一方若干悪乗りして騒ぐハルナや一部の生徒を注意しつつ担当の教師は、そのまま生徒達の調理する様子を眺めていたが木乃香達と超鈴音達の調理を見て思わず本音をポロリと漏らす。

木乃香達はメニューがペペロンチーノとカルボナーラのパスタにミネストローネとカプレーゼであるが、教師が特に驚いたのは木乃香達が何気にパスタを一から作ろうとしているところであり、超鈴音に関しても負けておらずこちらは得意の中華まんを生地から作っている。

思わずこれは料理大会ではなく調理実習なんだけどと口に出しそうになるも、別に悪いことでも問題がある訳でもないので止めに入るまではいかなかった。


「明日菜はウチとパスタ作りで、ハルナと夕映とさよちゃんはのどかとミネストローネ作りお願いや。」

「オッケー。」

「頑張ります!」

双方共に手際がいいのは先程も説明したが、木乃香達の場合は木乃香が仕切る形で作業を割り振っていてみんなで和気あいあいと調理をしていく。

明日菜は生パスタを作るのを木乃香と共にやることになり特に力の要る工程は明日菜に頼みつつ進め、他の夕映達はのどかと共にミネストローネ作りを始める。

ただ全てにおいて店と同様な手間をかけてる訳ではなくミネストローネに使用するブイヨンなんかは市販の固形スープの素を使うなど時間に合わせたレシピになっていた。

そして何かと比べられるように周囲の注目を集めているもう一方の超一味の方だが、こちらは超と五月がほぼ調理をして葉加瀬と古菲に簡単な作業を手伝わせている。

正直葉加瀬と古菲は調理をほぼ出来なく超包子でのいつもの様子がこんな形なのだろう。

まあ他のグループもある程度料理が得意な面々が調理をして苦手な者が簡単な作業を手伝うようなやり方なので、特に超一味のやり方がおかしい訳ではないが。


「これ麻帆良祭で超包子VSマホラカフェなんてイベントに出来そうね。」

「あっ、それ面白そう!」

当人達はというか木乃香は全く意識してないが周りはやはり超一味と木乃香達を比較して見てしまう。

特に面白いものが好きな少女達が多いだけに超包子とマホラカフェの料理バトルなんてイベントにしたらどうかと、先日から話し合いが断続的に続く麻帆良祭の出し物について意見を出していた。

昨年ではあり得なかったことだがこの一年で横島や木乃香の名前が売れマホラカフェの名前も売れている。

昨年の料理大会の優勝者が三人も居るクラスでもあるので話題性としては文句ないアイデアではある。


「料理バトルですか。 バトルというとあれですがもしかすると納涼祭で屋台の人気投票などして競うのは面白いかもしれませんね。」

言い出しっぺは裕奈でまき絵達に美空や鳴滝姉妹なんかが料理バトルの話で盛り上がっているが、そのアイデアにヒントを得たように夕映は麻帆良祭よりはむしろ納涼祭に使えるアイデアではと気付き考え始めた。

今年の納涼祭はすでに食のイベントにする方向で進み参加する屋台も八割方は決まっているが、夏の暑さを吹き飛ばすようなインパクトがある祭がしたいと考えまだ細かい内容は調整中の部分もある。

以前にも何度か説明したが納涼祭は麻帆良祭と体育祭の谷間のということや夏休みということもあり、あまり大掛かりなイベントをするサークルは参加が難しいという事情があった。

時期的にも夏の暑さを吹き飛ばして残暑を克服するべく食の祭りにしようと決めたのだが、ゲーム性というかイベントとしてもう一工夫欲しいと言われており予算や人員に会場の配置などを大学生を中心にした実行委員会でいろいろ検討しているのだ。


「それも面白そう!」

「考えてみればそういう屋台の人気投票とかあんまり聞かないもんね!」

「ただこれは参加するグループ全てが納得するルールが出来て了解が得られればですが。 下手に順位づけすると店やサークルの今後の運営に悪影響を及ぼしかねないですし、だからと言ってあまり露骨な宣伝目的でやられても困りますし。 一考の余地はあるアイデアですが。」

何気なく少女達が語り始めたアイデアはこの時代にはまだないB1グランプリのような食のイベントに近いものになるも、納涼祭に使えるかもしれないと口にした夕映はそれに乗っかるように賛成する友人達にそう簡単ではないとも口にして慎重な姿勢も見せる。

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