二年目の春・5

一方放課後の夕映は相変わらず忙しい。

元々図書館探検部の他にも児童文学研究会や哲学研究会に所属するなどしていた彼女であるが、今年に入ってからはそれらの部活動はほとんど参加してないほどである。

一応図書館探検部だけは月一での活動をなんとか続けているものの放課後の比重は横島の店と納涼祭と麻帆良カレーに傾いていて、部活動は別に夕映が居なくても困らないが店や横島絡みの案件は夕映が行かないと困るのが現実だった。


「うむ、イマイチですね。」

「……うん。 申し訳ないけど。」

そんなこの日夕映はのどかと共に麻帆良カレー実行委員会非公認の店の麻帆良カレーを食べたのだが、はっきり言えば市販のカレー粉を使ってとろみを付けないだけの代物でお世辞にも美味しいとは言えない。

無論市販のカレー粉を使っているのでマズイ物でもないが麻帆良カレーとしては失格であり、何よりその店はカレーは元より焼肉にラーメンにハンバーグなど何でもありのメニューを並べている個人経営の飲食店である。

ただそこは値段の割にボリュームが多いことで男子学生などそこそこ客が入っている。


「本部に戻って報告書を纏めましょうか。」

二人は量を少なめで頼んだのだがそれでも量が多く若干残したほどだが、別にお腹が空いて店に入った訳ではなく麻帆良カレーの実行委員会の仕事として非公認店の調査に来ていた。

麻帆良カレーは月日を追う毎に確実に麻帆良の街に定着していたが、やはり勝手に麻帆良カレーの名前を出す店は増えている。

雪広グループは実行委員会を通して特許を取得するなどそれなりの対応はしていたが、個人経営の飲食店に直接麻帆良カレーを勝手に出すなとまでは言ってない。

今のところは実行委員会認定の店を明確化しつつ非公認の店には場合によってそちらに加わるように誘いをかけていたが、その前段階として非公認店の調査は行われていて今回夕映とのどかが来たのもその為だ。


「ここは難しいかもしれないですね。」

「多分市販の業務用の物を調理してるだけみたいだもんね。」

最終的に非公認店を放置するか誘いをかけるかは実行委員会の大人が決めるので、二人は頼まれた店で食べて味や店の評価を報告書として提出するだけである。

もちろん実行委員会の大人も調査に行っているが、実際に飲食店で働き麻帆良カレーの味をよく知る二人の調査報告書は評価が高い。


「あまり下手なことをしないでそれなりの味とボリュームで勝負してますし、悪い店ではないかと。」

今回二人が行った店は店員の態度や料理に特に問題があった訳ではないのだが、基本的な考え方というか方針が麻帆良カレー実行委員会とは違う。

とりあえずボリュームのある料理を作ることを前提としていて味は普通に食べられる範囲で十分という感じなのだ。

下手に冒険して自分の味を出そうとしてない分だけ無難な味であり、業務用の食材なんかを使っているので何処かで食べた味なのだがそれなりで悪くはない。

麻帆良カレーに関しても別に拘りや客寄せに出してるようでもなくひっそりとメニューに加わってる程度なので悪気はないのだろう。

面白い店ではあるのだが公認の提供店にするには問題があるのは二人でもわかった。

ただ後は大人達が判断するだろうと結論を二人が出すことはなく、実行委員会の本部がある雪広コンツェルンに行き報告書を書いて仕事は終わりである。

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