二年目の春・5

その後少女達と入れ替わるように刀子が店を訪れ食事をしていたが、そこに偶然ガンドルフィーニと明石を連れた高畑がやってくる。


「やあ、今日は何かあるかい?」

「エビチリとかならすぐに出来ますよ。」

「じゃあ、それとビールで。」

刀子はすでに少女達も居なかったのでカウンター席で食事をしていたが、高畑達は刀子に一声かけると奥のボックス席に座り注文を頼む。

横島はとりあえずすぐに出せる中華くらげの料理とビールを出してメインの調理に厨房に入るが、高畑達はさっそく乾杯をして一日の疲れを癒すことになる。


「それにしても超君のことは災難だったね。 正直中等部の外での問題だから高畑先生に責任を負わせるのは反対したんだけど。」

この日の集まりは明石が声をかけていて今日発表されたばかりの超鈴音の処分に関することで、高畑が軽い口頭での注意とはいえ処分されたことを気遣ってのものだった。

実は明石はまだ四十代ながら教授でもあるし魔法協会でも次期幹部と言われるほどの実力者なのである。

まあ戦闘よりは後方支援タイプなので高畑とはまたタイプが違うが。


「いえ、僕にも責任の一旦はありましたから。」

「高畑先生よりは大学部の方が問題だったんだよね。 年配の教授なんかが随分甘やかしてたんだ。 僕らも気を付けては居たんだけど立場上中々ね。」

そもそも今回の一件では明石やガンドルフィーニに限らず多くの魔法関係者や教職員から高畑は同情されていた。

元々超鈴音の扱いは学園側が決めたことで甘やかしていたのは大学部の人間だったのだ。

いくら担任とはいえ表向き中等部の教師でしかない高畑が大学部での活動に口を挟むのは立場上なかなか難しいものがある。

同じく明石などは魔法協会の人間なので素性不明な超鈴音には気を付けてはいたらしいが、彼もまだ教授としては若いので年上の教授にあからさまに意見するのはまた難しい。

麻帆良学園は他の大学なんかに比べるとまだマシだがそれでも上下関係や派閥は当然あるし、直接関わりのない人間が口を挟んで素直に意見を変えるような人間はあまり居ないだろう。

それでもまだ魔法協会関係者は超鈴音を少なからず気を付けてはいたが、何も知らぬ表の人間からすると超鈴音は全く悪い子供ではないし実際超鈴音は大学部の教授達の研究にはかなり協力したりもしていた。

結局は超鈴音が一枚上手だっただけなのだが。


「一ヶ月の謹慎で大丈夫なのか? 結局素性は分からなかったんだろ?」

「現実問題として彼女の頭脳は麻帆良の役に立ってる。 それに懸案があるとすれば魔法関連の技術流出だけど、メガロメセンブリアやジョンソンと比べると取り立てて優れてると言えるほどでもない。 総合的に判断すると今のところは厳しい処分は誰の得にもならないと思う。」

この日集まった中でもガンドルフィーニ辺りは疑り深い性格なのか超鈴音を自由にすることに不安なようだが、明石は総合的な判断だと仕方ないだろうと口にする。

明石達から見ても超鈴音には何か裏がありそうだが、疑わしいだけで特に証拠になるようなものは近右衛門達が隠したのでないのだ。

最終的に麻帆良の魔法技術は世界的に見て高いがメガロメセンブリアやジョンソン魔法協会と比べると優れてるとまでは言い切れなく、それに対して超鈴音の技術は先に上げた二つの国と組織を越えるのだから冷静に考えると過剰な処分は誰の得にもならないと気付いていた。



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