二年目の春・5

同じ頃茶々丸は謹慎中の為に授業が終わり帰ろうとしていた超と葉加瀬を捕まえて、横島の店の個室に連れて来て話をしようとしていた。

修学旅行が終わった後もなかなかゆっくりと話をする機会がないことから自ら動いたらしい。


「いろいろと申し訳ありませんでした。」

「謝る必要はないネ。 茶々丸が信じた人達は見事だったヨ。 誰も傷つけず一滴の血も流さずに自分達の未来を守ったのだから。 例え同じように私を止めたとしても戦い血を流した結末と今回の結果では全く違うものヨ。」

そんな茶々丸の本題は超と葉加瀬への謝罪だった。

自ら決意して反旗を翻した茶々丸であるが、やはり自身が生みの親を裏切ったことには例え正しいことだとしても一言謝罪したかったようである。


「超……。」

「みんなギリギリのところで悩みに悩み抜いた結果なのは理解してるヨ。 お前も学園長先生も高畑先生も。」

決して後悔はしてないがそれでも最善だったとは言い切れない様子の茶々丸は製作者の超や葉加瀬から見ても驚くほど複雑そうな表情を浮かべていた。

それは人と変わらぬ感情を表現出来るようにと作った新型ボディ故の表情であるが、秘匿拠点の警備用にと臨時で使ったAIは感情プログラムなど入れてなかったので超と葉加瀬の二人も茶々丸が新型ボディを使う姿を見て自分達の作った茶々丸というAIの僅かな期間での進化に本当に驚いてしまう。


「茶々丸がそんな顔をするようになったことすら気付かなかった私には、世界を変えることなど不可能だったということかもしれないネ。」

葉加瀬は茶々丸のあまりに人間らしい成長に少し戸惑っているも超は本当に嬉しそうであり、そんな茶々丸の成長すら見落としていた自分の視野の狭さとミスには呆れるしか出来ないようだ。

加えて茶々丸が連れて来たこの店は超にとってイレギュラーの塊とも言える場所で、この店を中心に歴史がどんどん変わってしまい超を散々悩ませた場所なのだから何とも言えない心境になる。

もちろん修学旅行までは散々疑いかなり真相に近付いた超であるが、現状では何もしなかったように見える横島を疑っている訳ではない。

ただ客観的に見て歴史が横島を中心に変わり果ててしまった事実は変わりなく、木乃香達を筆頭に横島に近ければ近いほど歴史から解離しているので超にとって横島は現状でも不思議な存在であることに変わりはなかった。


「誰かは知らないがかなり優秀な人が居るようだし心配はしてないが、困ったらいつでも力になるヨ。 お前は私達が生み出さした子供みたいなものだからネ。」

尤も超はもう横島にさほど拘ってはなく、いつの日か全てを明かして横島の意見を聞いてみたいとしか思ってないが。

茶々丸に関しても反旗を翻した後しばらく困ったら力になろうと様子を見ていたが、誰かは知らないがきちんとサポートしてる人間が居るのは気付いているし茶々丸本人が充実した生活を送る姿を見ているだけに超としては終わったことの蟠りを解いていつでも力になると言うくらいしか今はすることがなかった。

結局計画を始める前に阻止された超鈴音にとって茶々丸は数少ない成果らしい成果であり、世界や未来と考える前に茶々丸が幸せそうな姿を見るだけで少なくとも自分の二年間が全くの無駄ではなかったと思えることが幸いだったのかもしれない。


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