二年目の春・5

「古菲君か。」

同じ日の放課後には刀子が近右衛門の元を訪れて古菲のことを伝えていたが近右衛門は少し考え込んでしまう。

超鈴音の歴史において古菲は将来裏の世界でも有名な格闘家となりネギと仲間達の重要な一翼を担う存在になるのだが、戦いを望まぬ横島とは微妙に合わないのか現状では横島や木乃香達とはあまり関係が深くない。


「あの手の人間が闇に堕ちるのは神鳴流ですらありますから。」

刀子としては古菲の現状を見て危ういと判断していたが近右衛門は超鈴音の歴史を思い出して確かにこのまま放置するのは些か問題になる可能性を考えている。

古菲単独では問題を起こすとは思えぬが歴史の揺り戻しでも起きて魔法世界絡みの事件に巻き込まれでもしたら厄介だった。


「確かに高畑君はそろそろ後進の指導に回って欲しい頃じゃな。」

加えて近右衛門は最近高畑にもそろそろ弟子というか見習いの指導に回って欲しいと考え始めているところだった。

子が親を育てるという言葉もあるように見習いを指導することで、魔法関係者もまた人として魔法使いとして成長するというところもある。

以前のような我が身を捨てて世界の為にとまで行くと忙しさもあるし正直極端過ぎて見習いを預けられないが、最近はすっかり麻帆良に腰を下ろしていて人間的に落ち着いたので高畑の為にも誰か適当な見習いを預けようかと考えていたところだ。


「中等部の教師陣の間でも評判はいいですよ。 最近は男性教師と飲みにも行ってるようですし、元々人格は折り紙つきですから。」

ちなみに高畑に関しては中等部での評価が以前とは比べ物にならないほど良くなっていて、教師陣も生徒も最近の高畑の悪口を言う人はまず居ない。

元々教師陣なんかは人格は褒めてもまるで張り詰めた糸のように何かに囚われるようにボランティアに行くことで賛否が分かれていたのだが、最近は教職に専念するばかりか同僚の教師陣とのコミュニケーションなんかも積極的に取っている。

元々人生経験は人一倍あるので生徒に頼られるばかりか同僚にまで頼られ始めているらしい。


「そうか、変われば変わるもんじゃな。」

「横島君達のおかげでしょう。 神楽坂さんとの関係も本当に良くなりましたし。」

刀子から聞く最近の高畑の変化に近右衛門は嬉しそうな表情を隠さなかった。

冷たいかもしれないがやはり近右衛門は遠い魔法世界よりも高畑が心配だったのだ。


「そうじゃな、高畑君に古菲君のことを頼むことにしよう。」

横島が直接何かをした訳ではないがエヴァの件も高畑の件も結果的に横島と周囲の影響でいい方向に進んでる。

近右衛門は古菲もまた道を踏み外さぬように、そんな横島と周囲の影響が少しでも及ぶ高畑の元がよかろうと考え高畑に任せることにした。

一つ一ついい方向に進んでる実感があるからか、この日の近右衛門は本当に肩の荷が降りたようで清々しい気分であった。


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