二年目の春・5
一方厨房では坂本夫妻の夫に弟子の藤井と横島・木乃香・のどかにさよと明日菜も雑用で厨房入りしていた。
前回までと同じく基本的には坂本夫妻の夫が仕切っているが夫は昔馴染みが来たら挨拶に抜けることもあるので、弟子の藤井を中心に横島達が主力となっている。
ただこの麻帆良亭の日に関しては一番成長と言うかいい経験になっているのは他でもない横島で、元々借り物の技術と経験を人間を越える超感覚で補っている横島にとって坂本夫妻の夫が半世紀にも渡り積み重ねた人としての技術と経験は見ているだけで勉強になっていた。
「君はやはり感覚も要領も良すぎるな。 そうじゃなくこうしてみるといい。 少し手間だが味わいに僅かに深みが出る。」
そして坂本夫妻の夫が一番気にかけているのもまた横島であり、目で見て盗むように坂本夫妻の夫の技術を学んでいく横島に彼はいつの間にか細かなアドバイスをしている。
横島は目で見て坂本夫妻の夫の現状の技術は盗むがその過程の試行錯誤や積み重ねまでは当然盗めてない。
なまじすぐに結果としての技術だけを盗めてしまう横島を危惧してついつい教えてしまうようであった。
「なるほど。」
「才能がありすぎるというのも厄介だな。 何度も言うがそれが君の強みであり弱点でもある。 私も昔は出来がよくなくてな。 私よりも才能がある先輩や後輩に嫉妬したこともあるが、才能があればあるなりの苦労があったのかもしれないな。」
一旦は引退した身であり弟子にするつもりもないが、若く才能溢れる横島達を見ていると放っておけないのだろう。
実際横島の腕前は超一流とも言えるので並の料理人では指導など出来るはずもなく、同じく超一流の料理人ながら長年苦労していた坂本夫妻の夫のような人でなくては指導出来ない。
加えて坂本夫妻の夫自身がどちらかと言えば苦労人で元々は決して抜きん出た料理人ではなかったこともまた大きい。
「横島さんの弱点ですか。」
「常人からしたら小さな小さな弱点だよ。 常人ならば経験を積み重ねれば普通に超えれる壁だ。 だが横島君のようなタイプは意外と常人が超えれる壁に気付かず躓くかもしれない。 君達も年寄りのお節介だと思って頭の片隅にでも覚えておいて欲しい。」
そんな横島を指導している坂本夫妻の夫の言葉に話を聞いていた木乃香とのどかは反応し、横島の弱点を見つけられる坂本夫妻の夫がやはりただ者ではないと改めて実感する。
そもそも横島という男はいろいろ秘密があり分からないことも多く一概に言えないが、才能の割に変なところに欠点があるのは木乃香達からすると周知の事実だった。
なんとなく何とかしてしまうのであまり目立たないが料理に限らずミスや失敗も当然あるのだ。
ただそれでも横島の技術や経験が抜きん出てるのは確かで、その中から弱点を見つけ出すのは簡単ではない。
「才能を見込まれ将来を期待された学生がいつの間にか噂も聞かなくなったなんて話は麻帆良でも珍しくないからな。 料理人だってそんな人を私は何人か見てきた。 私自身も自分の料理には誇りをもっていたが……。」
結果として坂本夫妻は横島のみならず横島達にとって得がたい存在であるのだが、弟子の藤井は昔はあまり口数が多くなかった師が木乃香達にも理解できるようにと事細かに話して聞かせる姿に目を奪われていた。
引退して変わった師に対する想いは一言では言い切れないものがあるが、弟子である藤井は坂本夫妻の夫が引退した今も自身の研鑽を積み努力していることを気付いている。
もしかすると坂本夫妻は横島達に何かを残そうとしているのかもしれないと思いつつ、自身もまた師を超えたいと強く思い始めることになる。
前回までと同じく基本的には坂本夫妻の夫が仕切っているが夫は昔馴染みが来たら挨拶に抜けることもあるので、弟子の藤井を中心に横島達が主力となっている。
ただこの麻帆良亭の日に関しては一番成長と言うかいい経験になっているのは他でもない横島で、元々借り物の技術と経験を人間を越える超感覚で補っている横島にとって坂本夫妻の夫が半世紀にも渡り積み重ねた人としての技術と経験は見ているだけで勉強になっていた。
「君はやはり感覚も要領も良すぎるな。 そうじゃなくこうしてみるといい。 少し手間だが味わいに僅かに深みが出る。」
そして坂本夫妻の夫が一番気にかけているのもまた横島であり、目で見て盗むように坂本夫妻の夫の技術を学んでいく横島に彼はいつの間にか細かなアドバイスをしている。
横島は目で見て坂本夫妻の夫の現状の技術は盗むがその過程の試行錯誤や積み重ねまでは当然盗めてない。
なまじすぐに結果としての技術だけを盗めてしまう横島を危惧してついつい教えてしまうようであった。
「なるほど。」
「才能がありすぎるというのも厄介だな。 何度も言うがそれが君の強みであり弱点でもある。 私も昔は出来がよくなくてな。 私よりも才能がある先輩や後輩に嫉妬したこともあるが、才能があればあるなりの苦労があったのかもしれないな。」
一旦は引退した身であり弟子にするつもりもないが、若く才能溢れる横島達を見ていると放っておけないのだろう。
実際横島の腕前は超一流とも言えるので並の料理人では指導など出来るはずもなく、同じく超一流の料理人ながら長年苦労していた坂本夫妻の夫のような人でなくては指導出来ない。
加えて坂本夫妻の夫自身がどちらかと言えば苦労人で元々は決して抜きん出た料理人ではなかったこともまた大きい。
「横島さんの弱点ですか。」
「常人からしたら小さな小さな弱点だよ。 常人ならば経験を積み重ねれば普通に超えれる壁だ。 だが横島君のようなタイプは意外と常人が超えれる壁に気付かず躓くかもしれない。 君達も年寄りのお節介だと思って頭の片隅にでも覚えておいて欲しい。」
そんな横島を指導している坂本夫妻の夫の言葉に話を聞いていた木乃香とのどかは反応し、横島の弱点を見つけられる坂本夫妻の夫がやはりただ者ではないと改めて実感する。
そもそも横島という男はいろいろ秘密があり分からないことも多く一概に言えないが、才能の割に変なところに欠点があるのは木乃香達からすると周知の事実だった。
なんとなく何とかしてしまうのであまり目立たないが料理に限らずミスや失敗も当然あるのだ。
ただそれでも横島の技術や経験が抜きん出てるのは確かで、その中から弱点を見つけ出すのは簡単ではない。
「才能を見込まれ将来を期待された学生がいつの間にか噂も聞かなくなったなんて話は麻帆良でも珍しくないからな。 料理人だってそんな人を私は何人か見てきた。 私自身も自分の料理には誇りをもっていたが……。」
結果として坂本夫妻は横島のみならず横島達にとって得がたい存在であるのだが、弟子の藤井は昔はあまり口数が多くなかった師が木乃香達にも理解できるようにと事細かに話して聞かせる姿に目を奪われていた。
引退して変わった師に対する想いは一言では言い切れないものがあるが、弟子である藤井は坂本夫妻の夫が引退した今も自身の研鑽を積み努力していることを気付いている。
もしかすると坂本夫妻は横島達に何かを残そうとしているのかもしれないと思いつつ、自身もまた師を超えたいと強く思い始めることになる。